トランプ氏が「再エネ見直し」を宣言

こうした「バイデノミクス」への不満が高まる中、再エネ推進策の是非が大統領選の行方にも影響を及ぼしている。

トランプ前大統領は共和党の大統領候補に指名されることが確実視されているが、東海岸ニュージャージー州で5月11日に開催された支持者集会で、「洋上風力発電プロジェクトを標的とした大統領令を発布する」と宣言した。

具体的な内容は明らかにしなかったが、大統領令によって洋上風力発電の影響を改めて調査し、新規プロジェクトの許可を停止する可能性があると、ロイター通信は伝えている。

「バイデン大統領がインフレをもたらしている」トランプ氏の攻撃

トランプ氏がニュージャージー州で宣言したことには理由がある。ニュージャージー州は米東部沿岸に位置し、民主党が強い州として知られている。

同州の家庭用電気料金は2023年に最大6.9%値上げされている。それに加えて、6月にはさらに最大8.6%も引き上げられる予定だ。

その結果、同州の家庭用電力はさらに20%を超える値上げがあり得ると予想されている。

トランプ前大統領とつながりが深い共和党系のシンクタンクであるヘリテージ財団の試算では、人口がおよそ930万人のニュージャージー州において、マーフィー知事が提唱する「完全再エネシフト」で合計11ギガワットの洋上風力発電能力を獲得するには、州民1人当たり8000ドル(約125万円)、総額で740億ドル(約11兆5346億円)の負担が必要だ。インフレ調整後には、さらに高額となる。

ニュージャージー州住民の洋上風力発電への支持率は、2019年9月の80%から、2023年9月には50%まで低下した。逆に、反対は15%から33%へ増加している。

トランプ氏の「再エネ見直し宣言」は、こうした状況を踏まえたものである。

「バイデン大統領は、採算の取れない再エネ推進で、『光熱費インフレ』をもたらし、コストの負担を住民に押し付けている」「バイデン大統領は生活に必須の電気代を高騰させ、貧しい人のお金を収奪している」と攻撃しているわけだ。

写真=iStock.com/Dragon Claws
採算の取れない再エネ推進で「光熱費インフレ」をもたらしている(※写真はイメージです)