電気代が値上げしないためにも風力発電は欠かせない

国内外で、わが国企業が洋上風力発電事業への取り組みを強化している。今のところ、洋上風力発電はわが国にとって再生可能エネルギーの切り札的な存在だ。洋上風力発電事業分野での成果が、中長期的なわが国のエネルギー政策に与える影響は大きい。

最近の動きの中で特に注目したいのは、三菱商事と丸紅の取り組みだ。三菱商事は国内外の企業との関係を強化してコスト面で優位性が高い洋上風力発電事業を急ピッチで強化している。また、欧州では丸紅が浮体式の洋上風力発電事業に取り組む。それ以外の企業も洋上風力発電への関与を強めている。

中西勝也 三菱商事次期代表取締役社長
写真=時事通信フォト
中西勝也 三菱商事次期代表取締役社長(2022年4月1日付)(記者会見。東京都千代田区)

2021年5月に経済産業省が公表した試算では、一つのシナリオとして、2050年にカーボンニュートラルを実現するため発電のコストが上昇すると、わが国の電気代は2倍程度に上昇する可能性がある。電力料金が上昇すると、国内の生産や消費にはマイナスの影響が及ぶことは避けられない。総合商社が内外企業の知見、技術、発想の新しい結合を目指し、洋上風力発電事業の効率性向上に集中する展開を期待したい。それがわが国にもたらすメリットは大きい。

コンペで“圧勝”した三菱商事の強み

近年、大手総合商社が洋上風力発電など再生可能エネルギー事業を強化している。足許で注目を集めているのが三菱商事と丸紅のプロジェクトだ。

昨年12月に経済産業省と国土交通省が発表した洋上風力発電事業者の公募(コンペ)の結果、“秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖”、“秋田県由利本荘市沖”、および“千葉県銚子市沖”での洋上風力発電事業運営者として、三菱商事が中心となって組んだコンソーシアムが選ばれた。3つのプロジェクトのいずれも、海底に風車の土台を固定する“着床式”の洋上風力発電事業だ。事実上、コンペは三菱商事の圧勝だったとみられる。

ポイントは、三菱商事が洋上風力用の大型風車メーカー(米GE)、建設事業者(中部電力と三菱商事が共同で買収したオランダのエネコ)、潜在的な顧客(アマゾンなど)と連携し、価格競争力と成長期待の高い事業計画を立案したことにある。ある意味では、オープンイノベーションの重要性を確認する良いケースといえる。