日本の地形に有利な「浮体式技術」が進む

丸紅は、スコットランド沖の“浮体式”の洋上風力発電事業の運営者に選定された。丸紅は英国とデンマークの企業と共同して事業を運営する。当該案件で最も重要なポイントは、浮体式技術の確立が目指されることだ。わが国には水深の深い海域が多い。そのため、海上に風車を浮かべて発電を行う浮体式の洋上発電技術の確立は、再生可能エネルギーの利用増加に欠かせないといわれている。

問題は、海上に浮かべた土台の上に風車を設置して安定的に発電を行う技術がいまだに確立されていないことだ。そのため着床式に比べると浮体式の洋上風力発電のコストは高い。

今回、丸紅が選ばれた浮体式の洋上風力発電事業は世界最大級といわれ、多くの欧米の大手エネルギー企業などが権利を手に入れようと競合した。その結果として丸紅が事業者として選定されたことは、わが国の洋上風力発電の増加に追い風となるだろう。

遅れていたエネルギー政策転換の切り札に

三菱商事と丸紅などの洋上風力発電事業が、化石燃料依存から脱却し再生可能エネルギー利用を増やすというわが国のエネルギー政策の転換に与える影響は大きい。現在、わが国の電力供給は化石燃料を用いた火力発電に頼っている。資源エネルギー庁が公表する総合エネルギー統計によると2020年度の電源構成(発電量)のうち、石炭が31.0%、天然ガスは39.0%を占める。再生可能エネルギーの利用に関しては、水力が7.8%、太陽光が7.9%、風力は0.9%にとどまる。

資源エネルギー庁が公表した「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」によると、政府は2030年度の電源構成の36~38%を再生可能エネルギーでカバーすることを目指している。そのうち太陽光が最大16%、風力が5%の電力供給を担うことが目指されている。2030年度に政府は電源構成に占める石炭の割合を19%程度、天然ガスを20%程度に低下させることを目指している。原子力の利用増加が難しいため、中長期的に化石燃料への依存は続く可能性がある。