「EVシフトだけで脱炭素は実現できない」
電気自動車(EV)の販売に急ブレーキがかかっている。各国は「EVシフト」目標を掲げていたが、一般消費者への普及の壁である「キャズム」を乗り越えることが困難で、新車EV販売の楽観的な目標達成は現実的ではないとの見方が支持を増やしている。代わりに、トヨタ自動車の豊田章男会長による「自動車市場でEVは最大3割のシェアにとどまる」という予想が現実味を帯びてきている。
加えて注目されているのが、豊田氏が2020年12月に日本自動車工業会のオンライン懇談会で発した次の言葉だ。
「乗用車400万台すべてをEV化すると電力が10~15%不足するが、これは原発でプラス10基、火力発電であればプラス20基に相当する」
「その投資コストは、約14~37兆円にも上る」
豊田氏の主張は、要するに「EVシフトだけで脱炭素は実現できない」というものだ。同時に、「再エネの普及には想像をはるかに超える経済的・社会的コストが発生する」とも指摘している。
再生可能エネルギーの有効性が疑問視されている
この豊田氏の分析は、何も日本に限った話ではない。たとえば、米国や欧州では風力・太陽光などの再生可能エネルギーへのシフトが進められており、巨額の政府補助金が支出されている。
にもかかわらず、多くの再エネプロジェクトは高コスト体質を露呈している。
特に米国では、再生可能エネルギーの一部プロジェクトが不採算で打ち切りになったり、電気料金の高騰を招いている。そのため、「EVシフトがすぐには起こらないのと同様、再エネの急速な普及も非現実的」と疑問視され始めている。
本稿では、再エネ発電先進州であるカリフォルニアをはじめ、北東部諸州において再エネプロジェクトが頓挫している実態を紹介するとともに、再エネの是非が11月の大統領選挙において争点化している現状を伝える。