民間企業の撤退が始まっている

いま米国では再エネ開発プロジェクトが中断するケースが増えている。

デンマーク企業のオーステッドはニュージャージー州沖で洋上風力発電の設備建設を手掛けていたが、予期せぬインフレによる経費増や、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによる金利負担の膨張により、事業継続が困難になった。

同社は2023年6月に、州政府から特別に税額控除による還付金を受けたが、その後も基礎工事・電力ケーブル敷設・維持管理コストの高騰が止まらず、採算のメドが立たなかったため、合計で1.1ギガワットという2つの事業を2023年10月に中断した。

バイデン政権は2030年までに、1000万世帯分の電力に相当する合計30ギガワットの洋上風力発電能力を実現させる計画だった。だが、オーステッド、ノルウェーのエクイノール、英BP、スペインのイベルドローラなどの大手民間企業が、2023年末までに軒並み手を引いている。彼らが手を引いたのは、ニュージャージー州、ニューヨーク州やコネチカット州など合計12ギガワット以上もの大プロジェクトだ。

相次ぐ洋上風力発電事業からの撤退をかつての名作映画になぞらえて「風と共に去りぬ」というシャレまで作られている。

風力発電
写真=iStock.com/zentilia
民間企業の撤退が始まっている(※写真はイメージです)

それでも再エネ推進は続く

バイデン政権が2030年までに30ギガワットの発電能力獲得を目指す洋上風力発電は、カリフォルニア沖で計画中の分も含めて、その半分でも実現すれば御の字だと、ブルームバーグは伝えている。

こうした逆風にもかかわらず、ホワイトハウスは「洋上風力発電5カ年計画」を策定し、新たに10ギガワット分のプロジェクトを立ち上げようとしている。

さらに、バイデン大統領は「気候変動の緊急事態」を宣言し、大統領令で化石燃料の開発を大幅に制限する一方、議会承認の必要がない巨額の補助金を再エネ開発に投入することを検討中だと、ブルームバーグが4月17日に報じた。

ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事など北東部沿岸の民主党州の知事らは、洋上風力発電事業の入札条件を緩和し、完工時期に厳格にこだわらないほか、インフレに合わせてプロジェクト経費を入札額より15%ほど多く州に請求できるようにする再交渉で、洋上風力発電企業を呼び戻そうとしている。