EVは「捕らぬ狸の皮算用」

経済合理性や生活上の利便性を度外視し、現実離れした条件・前提に基づく需要見通しのもと、EVという未成熟技術を強引に推進しようとしても、まさに「捕らぬ狸の皮算用」だった。

一方、目標の大幅な下方修正を迫られている再エネもまた、EVとよく似た面があるのではないか。

再エネ推進が「破滅的な結果をもたらす」予想も

事実、米環境保護庁(EPA)が2023年11月に開催した電力供給信頼性会議において、電力業界関係者から「EPAが2030年から実施する予定の化石燃料による発電の制限は現実的ではない」「電力網の信頼性が損なわれ、破滅的な結果をもたらす」「規制導入までの時間が短すぎる」などの反対意見が噴出したという。

こうした再エネやEVにまつわる一連の動きを見るにつけ、冒頭に紹介した豊田章男氏の冷静な分析の凄さが際立つ。2020年12月の段階で、「EVだけでは脱炭素にならない」「再エネは想像をはるかに超える経済的・社会的コストをもたらす」と、その問題点を正確に看破していたのだから。

バッテリーEV戦略に関する説明会での豊田章男氏
写真=AFP/時事通信フォト
2020年12月の段階で問題点を正確に看破していた(バッテリーEV戦略に関する説明会での豊田章男氏、2021年12月14日)

「クリーンエネルギーへのシフトはもはや止められない」(国際エネルギー機関、IEA)といったメディアで喧伝される「バラ色の将来予測」は、現実に即した冷徹な再計算で見直されるべきではないだろうか。

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