歌舞伎町の風俗店で働いていた20代後半女性が医学部合格

一人目は、4年間の受験勉強の末、34歳で医学部に合格したコウジさん(仮名)。父親は内科系クリニックの院長で、母親は事務としてクリニックを支えていた。

コウジさんは慶應義塾大学の文系学部を卒業後、大手金融機関に内定が決まっていた。ところが卒業間際に母が病に倒れたため、大卒後はクリニックで働くことになった。数年間経営業務などに携わりながら父の医療業務を見ているうちに、いつしか父のクリニックを継ぎたいという思いが芽生え、30歳で医学部受験を決意した。

だがコウジさんは文系出身だったため、数学と理科の知識はほぼ皆無。まさに、ゼロからのスタートだった。

「コウジさんは幼稚舎で慶應に入り、大学までエスカレートで進学してきたこともあり、受験勉強のハードルは非常に高かった。特に数学と理科に至っては、中学の勉強から徹底的にやり直すことに。クリニックで働きながら個別指導塾で3年、最後の1年は私が在籍していた医学部専門予備校に1年通って勉強に集中し、無事4年目に偏差値60台の医学部に合格しました」

同じく社会人で受験に挑み2年目に合格を勝ち取ったケイコさん(仮名)の場合はどうか。

「ケイコさんは高校卒業後、看護専門学校に進学し、1年で中退。その後は芸能活動をしながら新宿歌舞伎町の風俗店で事務員のアルバイトをしていました。勤務先では、知識不足ゆえ若くして望まぬ妊娠や性病で苦しむ女性たちを数多く見てきたそうです。ケイコさんは医師の両親のもと、比較的恵まれた家庭環境にいた。にもかかわらず自分は彼女たちの手助けが何もできないことが歯がゆかった。そこで、医師になって女性達に正しい知識を与えていきたいと、20代後半で一念発起して医学部受験を目指したのです」

ケイコさんも個別指導塾から受験勉強をスタート。当初は模試を受けてもほとんど点が取れず、偏差値がつかないくらいのレベルだったという。だが、一年間の猛勉強を経て、私立大医学部の1次試験(英・数・理科2科目)を突破。経歴や年齢がネックになると予想された2次試験(面接など)は七沢さんのアドバイスのもと、2年目で合格を勝ち取った。

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