空振っても、見逃すよりはずっとマシ

現在のシステムでは、複数の観測データの分離がうまくできず、緊急地震速報の空振りがゼロにはなりません。

2020年7月30日に関東甲信、東海、東北地方で緊急地震速報の「誤報」が発生し、気象庁が会見でおわびしました。その原因は、緊急地震速報の処理過程で本来の震源と異なる位置に震源を決定しM7.3という過大な値が出たからです。

もしこのような状況が頻発するとすれば「オオカミ少年効果」が生じて、地震への警戒感が薄れる恐れが出ます。しかし、緊急地震速報は一刻も早く予測を出すためのシステムであり、「空振り」があることよりも「見逃し」の少ないことを重視すべきだ、と私は思います。

たとえば、SNSでは先の事例でも「誤報でよかった。危機感が出て身構えます」「逆のことが起きるよりよっぽどマシ」という意見が多かったそうです。

緊急地震速報を受けたあと揺れが来るまでには、ごくわずかな時間しかありません。速報が出たら自分の身を守ることを第一に行動し、大揺れが来なかったら「よかった」と思っていただきたいと考えています。

運転中でも急ブレーキをかけてはいけない

では、緊急地震速報が出たら何をすればよいのでしょうか。緊急地震速報を見たり聞いたりしたら、ただちに大きな家具から離れ、頭を保護し丈夫な机の下などに隠れます。扉を開けて避難路を確保しますが、あわてて外へは飛び出してはいけません。

ガス台など火のそばにいる場合は、落ち着いて火の始末をします。一方、火元から離れている場合は、無理をして消火しようとせず、自分の身を守ることを優先します。速報が出てから実際に揺れるまでにできることは、非常に限られます。よって、ガスの元栓を閉めるよりも、自分の身を守ることを勧めているのです。

屋外を歩いている場合は、ブロック塀の倒壊や自動販売機の転倒に注意します。さらに、ビルから落下してくるガラス、壁、看板に注意し、ビルの近くからできるだけ離れるようにしましょう。

車の運転中であれば、後続車が緊急地震速報を聞いていない可能性を考慮し、急にはスピードを落とさないようにします。まずハザードランプを点灯しながら周囲の車に注意を促し、徐々にスピードを落とさなければなりません。

もし、大きな揺れを感じたら、急ハンドル・急ブレーキを避け道路の左側へ停車します。列車やバスの中では、つり革、手すりなどにしっかりとつかまるようにします。

写真=iStock.com/CasarsaGuru
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