発生前に知らせる「地震予知」とは別物

緊急地震速報は、震源地から地震が発生した直後に出されます。そのために地震が起きる前に情報を出す「地震予知」とは区別されています。テレビ、ラジオ、スマートフォン、専用の端末機器などを通じて、揺れの始まる数秒から数十秒ほど前に、揺れの大きさ(震度)や地震が起きた場所(震源)を伝えます。

初めに気象庁から発表され、気象業務支援センターを通じて一般利用者に配信され、さらに企業や家庭の末端利用者へ二次配信が行われる仕組みです。緊急地震速報は最大震度が5弱以上の揺れを観測したときなどに発表されます。揺れの直前や揺れている最中に、リアルタイムで情報を伝達する、という点が最大の特徴です。

緊急地震速報の根底には、自分の身を自分で守るという発想があり、現在さまざまな場所で活用されています。エレベーターの運行停止、ガスの元栓の遮断、工場の生産ラインの停止、避難路の照明を自動で点灯、などが挙げられます。

P波とS波の「タイムラグ」を利用

ここで緊急地震速報の仕組みを具体的に見てみましょう。地下で地震が起きると、P波と呼ばれる小さな揺れと、S波と呼ばれる大きな揺れが同時に発生します。

P波は毎秒約7キロメートル、S波はこれよりも遅く毎秒約4キロメートルの速さでやってくるので、どの地域にもP波がS波より早く到着します。そのために英語で「最初に」の意味のPrimaryを用いてP波、また「次に」を意味するSecondaryを用いてS波と呼ばれているのです。

まず地震が起きる震源近くで、最初の小さな揺れのP波をキャッチし、大きな揺れのS波が到達する前に知らせるシステムを設置します。P波とS波の伝搬速度の差を利用することで、数秒から数十秒の間に地震の規模や震源を予測し、到達時刻や震度を発表しようというきわめて高度な技術です。

実際には、震源に最も近い観測点で地震波を捉えた直後から、震源の場所やマグニチュードなどの推定を始めます。マグニチュードや最大震度があらかじめ設定した基準を超えた瞬間に、緊急地震速報の第一報が発表されます。

その後、時間の経過とともに、少し離れた観測点でも次々と地震をつかまえます。こうして増えたデータをもとに再計算を行い、精度を上げた第二報以降を、複数回にわたり発表していくのです。まさにコンピュータが得意とする仕事です。