地震が起きた時、命を守るにはどうすればいいか。京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんは「地震を予測することはほぼ不可能だが、自宅で家具の下敷きになって重傷を受けないために、いまからできることはたくさんある」という――。

※本稿は、鎌田浩毅『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

ミニチュアの家
写真=iStock.com/SRT101
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「海で起こる地震」と「陸で起こる地震」の違い

はじめに整理をしておきましょう。地震には大きく分けて、「海で起こる地震」と「陸で起こる地震」の二つがあります。

第一のタイプは太平洋岸の海底で起きる地震で、莫大なエネルギーを解放する巨大地震です。陸のプレートと海のプレートの境にある深くえぐれた海溝で起きるため、「海溝型地震」とも呼ばれ、M8~9クラスの地震を発生させると予想されています。また、海で起こる地震は、東日本大震災のように津波が伴います。

もう一つの陸で起こる地震は、文字どおり足もとの直下で発生します。新聞やテレビなどでは「直下型」や「内陸型」などさまざまな表現がありますが、震源地が内陸であると考えれば十分です。

この地震は頻発している新潟県中越沖地震や岩手・宮城内陸地震、さらに熊本地震、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震、能登半島地震のような地震で、1995年に阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震もその一つです。これはM7クラスの地震であり、主に活断層が繰り返し動くことで発生します。

ビルが密集する都市部では被害が大きくなる

こうした直下型地震は震源が比較的近く、かつ浅いところで起きたという特徴があります。また震源地が人の住んでいるところに近いため、発生直後から大きな揺れが襲ってくるので、逃げる暇がほとんどありません。特に、阪神・淡路大震災のように、大都市の近くで発生する短周期地震動(短く小刻みな揺れの周期)をメインとする地震は、建造物の倒壊など人命を奪う大災害をもたらす非常に厄介な地震です。

いかに巨大なエネルギーを解放する地震でも、そこに人が住んでいなければ、あるいは壊れてくるものがなければ、被害は最小限に抑えられます。しかし、それほど大した地震でなくても、ビルが密集し、また空き地がほとんどない都市では、その被害は甚大なものとなってしまうのです。

実は、誘発地震の直撃する地域の中でも最も心配な場所が、東京を含む首都圏です。首都圏も東北地方と同じ北米プレート上にあるため、活発化した内陸型地震が起こる可能性が十分にあります。ここでM7クラスの直下型地震が突然発生することが、最大の懸念となっています。