東日本大震災では新幹線の脱線を防いだ

この方法を用いて、東日本大震災の直後に運転中の東北新幹線では、すべての車輛にブレーキがかかって大きな事故を回避できました。「早期地震検知システム」と呼ばれるものですが、最初の揺れが来る9秒前、また最大の揺れが来る1分10秒前に非常ブレーキがかかり、新幹線はただちに減速を始めたのです。地震発生時に東北新幹線は7本の列車が走行中でしたが、幸いどの列車も脱線することなく停車しました。

JR東日本は、東北新幹線の沿線と太平洋沿岸に地震計を設置しています。地震によって地面の動く加速度が120ガル(加速度の単位。速度が1秒あたり1センチメートルずつ速くなる状態)を超えると自動的に電気の供給が遮断され、走行中のすべての新幹線では非常ブレーキがかけられます。こうして高速運転中の脱線による大事故を未然に防ぐことができたのです。

緊急地震速報の約6割が「不適切」評価

ところで、緊急地震速報には弱点もあります。大きな地震の直前に、緊急地震速報が出るときと出ないときがあるのです。たとえば、地震の震源に近い地域では、緊急地震速報の前に強い揺れのS波が来てしまい間に合わない。また、短時間の限られたデータを解析した速報であるため、予測した震度が実際の震度と異なる、という技術的な限界もあります。

東日本大震災が起きてから、緊急地震速報が出される回数が非常に増えましたが、速報が出ても揺れを感じないことを何度も経験した方がおられるでしょう。いわゆる緊急地震速報の「空振り」です。

気象庁は、緊急地震速報を受け取ったすべての地域で、震度3以上を観測した場合は「適切」とし、一つでも震度2以下を観測した場合は「不適切」と評価しています。調べてみると、これまでに出された6割ほどが「不適切」なものでした。つまり、東日本大震災以降に精度が大幅に落ちたのです。

これはM9.0という巨大地震の発生により余震が多発し、離れた場所でほぼ同時に余震が到達したことがその原因です。