人気の売り場は「フランチャイズ化」できる

第二のキーワードは「フランチャイズビジネス」である。

セブンの利益率が高い理由で説明した通り、フランチャイズビジネスは、スーパーのような小売業より利益率が圧倒的に高い。営業利益率を上げていくための施策として、フランチャイズビジネスの展開は欠かせないだろう。

ヨーカ堂には、子ども向けに文房具やスクール用品を揃えた売り場「トイロスクール」がある。筆記具、ランドセル、上履き、子ども服、水着、傘……と主に小学生向けの商品を集めた売り場で、「夏休みの自由研究」などのコーナーを設けて関連商品を並べるような工夫も見られる。

「トイロスクール」が人気を集め、うまくブランディングできれば、コンビニのようなフランチャイズ展開が期待できる。ほかにも利益率が高いフランチャイズビジネスの開発は、ヨーカ堂の再生に貢献するはずだ。

また、ブランディングのうえでも、顧客とデジタルでつながることは要件の1つになる。ウォルマートの記事で詳しく解説したように、これから日本の小売業も、スマホのアプリで顧客とつながった企業が勝つと考えていいだろう。顧客が1日に何度も開くスーパーアプリを開発し、普及することができれば最強だ。スーパーアプリを通して、購買行動や商品の好みがわかる“識別顧客”を増やすことができれば、多様なビジネスの展開が可能になる。

筆者が注目する「創業家の動き」

これまで主に成長戦略の視点から、ヨーカ堂の再生に必要な施策を検討してきた。ここからは人事の視点から再生の可能性を探っていきたい。筆者が特に注目しているのは“創業家”の動きだ。

イトーヨーカ堂は、1920年に吉川敏雄氏が東京・浅草に開業した「羊華堂洋品店」が起源で、吉川氏の甥である伊藤雅俊氏が戦後に「羊華堂」として再出発している。伊藤雅俊氏が実質的な創業者だ。

写真=時事通信フォト
イトーヨーカ堂の創業者・伊藤雅俊氏

彼の次男である伊藤順朗氏は今年4月、セブン&アイHDの専務から副社長に昇格すると発表されたばかりで、ヨーカ堂はじめスーパー事業を担当してきた。

筆者の印象では、伊藤順朗氏はオーナー経営者としての使命感が強く、長期的かつ大局的な視野をもった経営者である。学習意欲が非常に高く、謙虚な人柄のためか人脈が広い。創業家の帝王学が素晴らしかったのだろうと筆者は感じている。

創業家でもうひとり筆者が注目しているのは、イトーヨーカ堂の取締役執行役員である伊藤弘雅氏。伊藤雅俊氏の長男である伊藤裕久氏の長男で、まだ40代初めと若い。