イオンは10月11日に、セブン&アイ・ホールディングスは12日に2023年の中間決算を発表した。どちらも営業利益が過去最高を記録したことが話題だ。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「それぞれが課題を抱えている。簡単には喜べないうえに、どちらが勝ちとも言えない明暗がある」という――。
総合スーパー「イトーヨーカドー」赤羽店の外観
写真=時事通信フォト
総合スーパー「イトーヨーカドー」赤羽店の外観=2023年3月31日、東京都北区

イオンもセブン&アイも過去最高の営業利益を記録

イオンが10月11日に発表した2023年の中間決算で、本業の儲けを示す営業利益が1176億円と過去最高を記録しました。主力である総合スーパー(GMS)事業も10年ぶりに黒字転換したということです。

ライバルであるセブン&アイ・ホールディングスもその翌日、同じく中間決算を発表し、営業利益が2411億円と過去最高だったと発表しました。セブンの決算が好調だった背景は国内および海外のコンビニ事業が全体をけん引したからです。

シンプルに見れば両社ともアフターコロナで客足が戻り、業績が過去最高で非常に良いという様子に見えるのですが、それぞれがそれぞれに課題を抱えています。簡単には喜べないうえに、どちらが勝ちとも言えない明暗があるという状況を記事にまとめたいと思います。

イオンが「明」でセブン&アイが「暗」なのか

まず先に注目したいのがセブン&アイのスーパーストア事業です。

セブンが9月1日にそごう・西武を売却したことで、セブン&アイ陣営で株主から最も注目されているのがイトーヨーカ堂とヨークが合併したスーパーストア事業の未来でしょう。イオングループのスーパーストア事業(GMSとSMの合計)と上半期の業績を比較してみます。

するとスーパー同士の比較では、

■イオン 売上高3兆248億円、営業利益200億円
■セブン 売上高7290億円、営業利益44億円

という数字になります。

イオンのスーパー事業と比較してイトーヨーカドーなどの業容は4分の1以下にまで差が開いてしまいました。ホールディングスとしては相応の規模の経営資源をつぎ込んでおきながらも営業利益全体の2%にも満たない稼ぎしか生まないという点が、海外の物言う株主が不満を感じる点です。

単純にこの数字を見て「イオンとセブンの明暗」という観点ではセブン全体は「明」だがセブンのスーパー事業は「暗」だという報道のトーンが多かったと感じました。逆に言えばプライベートブランドが好調だったイオンがライバルと比較した競争で「明」だったという報道も多かったのです。

全体像としては間違ってはいないのですが、細部についてはそうとも言えない点があります。そのことを少し深掘りして説明したいと思います。