セブン&アイのスーパーストア事業の営業利益は計画の倍近い数字

スーパーストアが収益の足を引っ張っているという株主からの批判を避けるために、セブン&アイは2023年9月にイトーヨーカ堂とヨークが合併した後も事業のさらなるスリム化を戦略として掲げています。もっと小さく、もっと高収益にという方向性です。

具体的には店舗数を減らし資産圧縮を進めたうえで、2025年度に自主アパレルから完全撤退することで、収益性の高い「食」にフォーカスしたスーパーへと変革していく戦略を掲げています。さらに投資家を安心させるためセブンはスーパーストア事業への投資はスーパーストア事業が生むキャッシュからしか再投資しないと強調しています。

実はセブンのスーパーストア事業の上期の業績は、期首の計画と比較すると売上高は▲0.4%ほど計画に未達でしたが、営業利益は期首の計画よりも倍近い数字をたたき出しています。そして規模で4倍以上離されたイオンのスーパー事業と比較しても売上高営業利益率ではそん色ないレベルに事業を磨き上げています。

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写真=iStock.com/Dan Dalton
※写真はイメージです

「IYマイレジ」を導入し始めたセブン&アイ

経済評論家の視点で興味深いのはセブンがセルフレジの進化に力を入れている点です。イトーヨーカドー アリオ北砂店に伺った際に目をひいたのですが、通常レジ、セルフレジ以外にIYマイレジというフルセルフレジが導入されていました。これはいくつかの店舗で先行して実験している試みです。一般的にスーパーではセルフレジに店員さんがひとりかふたり張り付いているケースが多いのですが、これをゼロにしようというのです。

IYマイレジでは消費者が買い物をしながらスマホアプリでバーコードを読み込んでいって、レジでは支払いするだけという仕組みです。買い物途中での明細がわかるという点では節約志向の消費者にとっても便利な取り組みです。

一般的に小売店ではレジに従業員の3割の時間が割かれます。ここを無くしていくことができれば生産性が大きくあがります。このフルセルフレジは2025年には全店導入の計画です。要するに、セブンではスーパーストア事業を縮小しながら同時に業界一収益性が高い事業へと持っていこうとしているのです。

実はこのイトーヨーカドーの戦略を確認したうえで、逆にイオンの決算資料を読み直すと気にかかる点が出てくるのです。本当にイオンのスーパー事業は「明」なのかという懸念です。