トヨタ自動車などと並ぶ日本を代表する「売り上げ10兆円企業」のセブン&アイ・ホールディングス。5月の株主総会では社長解任の株主提案が出されたが、業績は好調だ。経営コンサルタントの小宮一慶さんが2023年2月の決算を分析して見えてきたこととは――。
夜のセブン‐イレブン
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2023年5月下旬に行われたセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)の株主総会では、井阪隆一社長に対して機関投資家の一部から社長解任の提案が出たことが話題になりました。業績的には悪くない同社ですが、なぜ解任提案が出されたのでしょうか(否決され社長の続投が決定)。

今回はこのことについて同社のセグメント情報などを分析しながら考えていきます。日本の流通が抱える問題や日本経済そのものの問題点も見え隠れします。

個人的には、都内の私の事務所の近くにあるデニーズにはスタッフを連れて週に何度かはお昼ごはん食べに行っています。私のお気に入りですが、セブン&アイグループに属するデニーズの動向にも関心があります。余談ですが、多くのメニューがおいしく、とくに木曜日の日替わりランチのヒレカツ(ドリンクバー付きで790円)が私のお気に入りです。

全社で見れば好調と言えるが……

図表1はセブン&アイの2023年2月期の業績です。

【図表】セブン&アイ・ホールディングス 2023年2月期 決算短信

売上高に当たる営業収益は11兆8000億円強と、前々期の2022年2月期の8兆7000億円に比べて35%の増加です。日本でも営業収益が10兆円を超えている企業は、トヨタなどごくわずかな企業しかありません。

営業利益も5065億円とこちらも前々期より30%以上の増加です。北米での事業強化などもよりますが、かなり良い内容の決算です。

図表1には、経営指標も載せてあります。資産の有効活用度合いを示す「ROA(経常利益÷総資産)」は4.9%、投資家が注目する、投資家の保有分である自己資本に対する純利益を表す「ROE(純利益÷自己資本)」は8.7%です。これも十分に合格点だと言えます。

ROEに関しては、以前、いわゆる「伊藤レポート」という報告書で、日本企業のROEが低いことが指摘され、その中で8%を目指すべきとされたことから、日本企業は8%を目標としてきた経緯がありました。いまではそれをクリアしている企業も少なくなく、10%を目指している企業も多いのですが、セブン&アイも合格点だと言っていいでしょう。

営業段階で稼ぐ営業キャッシュフローを売上高で割った「キャッシュフローマージン」も7.9%と、キャッシュフローも十分に稼げていると言えます。また、企業の中長期的な安全性を示す「自己資本比率」も32.9%と十分に安全性は確保しています。20%程度あれば問題はないと言えますが、それを大きく超えているということです。