高騰を続ける卵の価格はいつ戻るのか
長年価格が変動せず、「物価の優等生」の異名を取り、スーパーの特売の目玉だった卵。その卸売価格は4月平均で1キロ350円(JA全農たまごの東京地区Mサイズ)と、昨年同月比で66%上がり、過去最高を記録し続けている。値上がりが収束するには1年、下手をすると2年かかるかもしれない。
「卵が値上がりして困ります。いつになったら、また安くなりますか?」
鳥インフルエンザが猛威を振るい、殺処分数が過去最多を記録し、国内で飼われている雌鶏の1割に達したと話題になっていた今年2月のこと。大阪のラジオ番組に出演していて、リスナーの女性からこんな質問をいただいた。安価なたんぱく源で、日々の食事や弁当に取り入れやすい卵の値上がりは困る。そんな「主婦感覚」は、この質問だけでなく、番組全体を貫く通奏低音になっていた。
卵は安くて当たり前。実はこの前提こそが、鳥インフルエンザの被害をここまで大きくし、外食のメニューから卵が消えたり、地域によっては量販店ですら卵が品薄になったりするという状況を生んでいる。
どういうことか解説する前に、今の値上がりを養鶏業者がどのように受け止めているか紹介したい。
「一般的な流通に乗せると廃業する」
「これまでの価格が異常に安かったんです。今スーパーでは1パック300円前後で販売されていますが、やっと正常な価格になったんじゃないか。とはいえ、養鶏業者はこれまで借金を重ねて経営をしているので、価格が少し高くなったからといって経営が楽になるわけではないですね」
こう話すのは、愛媛県四国中央市妻鳥町の有限会社熊野養鶏代表取締役の熊野憲之さん。羽数を増やして規模拡大するのが常識となっている業界において、飼っていた4万羽を1万7000羽まで減らしてきた。理由は、就農した時に卵を一般的な流通に乗せていては「廃業もしくは倒産する」と直感し、独自のブランドを確立し直売する路線に切り替えたからだ。