「鳥インフルに弱い構造」の上に安価な卵は成り立っている
大森さんは「動物の生命に由来する食品である以上、卵を工業的に大量生産される製品と同じように考えるべきではない」と警鐘を鳴らす。
予防に有効なワクチンはいまだ開発されていない。仮に開発されても、変異株の発生と新たなワクチン開発のいたちごっこになる可能性もある。それだけに、「現状の大型農場を運営するスタイルを将来も続けていくなら、毎年鳥インフルエンザにおびえながら被害を覚悟で経営していくしかない」と指摘する。
「消費者も低価格を目指すこの方針に同意するなら、大きな被害が発生したときは、卵の入手困難と極端な価格上昇という現実を受け入れるしかないでしょう」(大森さん)
現在の値上がりについて、農水省食肉鶏卵課は「過去の例では、半年くらいでニワトリが再導入され、1年後くらいから供給が元に戻る」とする。だが、大森さんは全国的に生じている大量かつ緊急のヒナの需要に対し、供給が間に合わないかもしれないと懸念を示す。
「仮に、来シーズンの鳥インフルエンザの発生時期が早まり、かつ収束時期が遅くなる可能性を考えれば、卵の供給を回復するのに2年ほどかかることも予想されます」(大森さん)
農水省の対策はその場しのぎでしかない
殺処分の増加を受けて、農水省は敷地がつながっている農場であっても、防護柵などを設けることで人や物の流れを遮断し、別農場として扱う「分割管理」を広めようとしている。再度の流行が予想される今秋までに、マニュアルをまとめたいという。
死亡率が高くなる可能性のある「高病原性鳥インフルエンザ」が発生すると、半径10キロ圏内にある養鶏場でも卵やニワトリの移動が制限される。敷地が隣り合うこと自体がリスクになるのだが、分割管理のマニュアルでは農場同士の距離については指定しない見込みだ。現状の行き過ぎた集積を是正するものではなく、その場しのぎの対策とも映る。