行き過ぎた規模拡大は即刻やめるべき
大森さんは以前から、被害を最小限に食い止めるために1鶏舎で飼う羽数の制限や、農場同士の距離の確保、群ごとの管理のあり方を工夫・改善する必要があると提言してきた。
「国民がこれからも卵を安定して食べ続けたいと望むのならば、今こそ養鶏業のあり方を見直すタイミングではないか」
こう指摘する。
消費者は「卵が高い」とこぼす前に、そもそもこれまでの価格が妥当だったのか考え直す必要がありそうだ。
今を鶏卵業界のいびつな構造をつくり替える好機と捉えているのは、熊野さんも同じ。
「価格が異常に安すぎたせいで、消費者の感覚がおかしくなっているところがある。今は『卵は安いもの』という考え方や意識を変えるいいチャンスなのかもしれない」(熊野さん)
消費者の立場からしてみれば、少しでも安い卵を買い求めたいと思うのは当然の心理だ。だが、今後も国産の鶏卵が安定して供給されることを望むのであれば、1パック300円前後の現状を「値上げ」と捉えるのではなく、「通常の価格になった」と考え直すことも必要と言えよう。
人口減少に伴う需要の減退で、ただでさえ養鶏業者の倒産が増えかねない状況にある。そこに飼料高騰と鳥インフルエンザで業界は疲弊している。
安い卵を安定的に供給するはずだった大規模養鶏場で感染が相次ぎ、卵の不足と価格高騰を招く。日本と同じ事態は、米国でも起きている。日米ともに野生動物の侵入や人によるウイルスの持ち込みを防ごうと躍起だが、奏功しているとは言いがたい。行き過ぎた規模拡大路線からは、早く離脱すべきだ。
今年もまた秋になれば、鳥インフルエンザの流行が始まるはずだ。消費者にとっても「喉元過ぎれば熱さ忘れる」が許される状況ではなくなりつつある。