米国のシリコンバレーバンクの破綻に端を発した金融危機は依然として予断を許さない状況だ。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「ネットバンキング全盛の今、国内外を問わず、危ないといううわさが出回ると預金が瞬時に移動して破綻し、その連鎖も起こりやすい」という――。
銀行の看板
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21世紀型の金融破綻の恐怖

前回のこの連載でシリコンバレーバンクの破綻に端を発した金融危機について書きましたが、その後も米国では中堅銀行の破綻が不気味に続いています

最近でも、カリフォルニア州の地銀、パックウエスト・バンコープの預金が一週間で1割流出したというニュースが流れていました。現状は当局が大手行に買収させるなどしてなんとかしのいでいますが、「危ない」といううわさが出て預金が流失すると、どんな銀行でも破綻リスクに直面します。

ましてや、ネットバンキング全盛の時代ではなおさらです。「21世紀型」の金融危機と言ってもいいでしょう。米国発の銀行破綻が、他国であるスイスの大手行クレディスイスの破綻に急に飛び火したのに驚いた方は多いかもしれませんが、金融の世界はそういうものです。金融、とくに銀行は信用で成り立っているので「危ない」といううわさが流れれば、それが外国の銀行であろうと容赦はありません。

ネットでうわさが飛び交う上に、預金者はネットバンキングで預金を即座に移動させることができるのです。以前なら、万一破綻ということになっても、金曜日にそれを発表し、土日であらかたの対策をとるというのがパターンでしたが、今では、ネット上で銀行が開いている時間かどうかにかかわりなく、預金が動かせるので、瞬く間に破綻が起こり、それが連鎖しかねないという状況です。

今のところ日本の金融機関は比較的安全ですが、それでも米国、欧州の銀行が今後も破綻を続ければ無傷でいられるかは不明です。

また、米国では金融への不安から銀行の貸し出し態度が厳しくなっていますが、これは米国経済を縮小させる可能性があります。経済が縮小すれば、もちろん、米国内の雇用や株価に影響します。世界のGDPの約4分の1を稼ぎ出す米国経済ですが、それに大きく依存する日本経済にとっても大問題です。

個別の産業では米国で活躍するトヨタやホンダなどの自動車産業、米国内に多くの店舗を持つセブン‐イレブンなどの流通業、米国への輸出を多く行っている機械関係の企業などにも影響しますし、せっかくコロナから立ち直りかけている旅行ビジネスにも影響が出ます。

コロナを何とか乗り切った日本経済ですが、これも、米国や海外で活躍するグローバル企業の業績が良かったことも大きく関係しています。米国経済が先行き不透明なことは、日本のグローバル企業の今後の業績にも影を落とすのです。

今回は金融危機を横にらみしながら、米国経済全体を俯瞰ふかんします。今のところ減速感が出てきているものの、何とか急降下はしのいでいるという状態です。しかし油断は禁物です。米国経済は軟着陸する可能性もありますが、すべては、金融危機が来るかどうかにかかっていると言えます。