苦戦するスーパーストア事業、百貨店・専門店事業

一方、スーパーストア事業は苦戦しています。営業収益こそ1兆4000億円を超えていますが、営業利益は121億円しかなく、利益率は0.8%です。利益額でも大きく見劣りする上に、営業収益、使用資産に対する利益率もコンビニエンスストア事業よりも大きく落ちる状況です。

投資家から見れば、効率、とくに使用資産に対する利益の効率性は、ROA(資産利益率)のみならず、投資家へのリターンに大きく影響するROE(自己資本純利益率)にも影響するため、神経をとがらせているのです。

そごう・西武を中心とする百貨店・専門店事業も、営業収益営業利益率、資産利益率がともに0.7%と極端に低い状況で、以前から投資家には大きな批判の対象でしたが、こちらの事業は、売却が決定されています。

私が個人的にとても関心のあるデニーズは、セブン&アイ・フードシステムズという会社に所属し、「その他」のセグメントに属します。「その他」の事業もかなり苦戦しているようです。

海外コンビニ事業拡大に動くセブン&アイ

ここまで見てきたように、セブン&アイでは、利益の大部分を国内外のコンビニエンスストア事業が稼ぐという構図になっています。そうした中、先にも述べたように、国内のコンビニ事業は、ファミリーマートやローソンなどの競合との競争が続いています。何よりも、各社の出店が続いたことにより、店舗を新たに出店できる地域が限られてきており、今後は他のフランチャイズ店の自社グループへの転換を進めるなど、戦略が限られてきています。

こうした中、セブン&アイでは、このところ北米への進出を急速に進めてきました。今後は北米以外でのコンビニ業務の拡大を目指しており、2025年までに5万店の店舗網確立を目指しています。

ユタ州にあるセブンイレブンの看板
写真=iStock.com/Roman Tiraspolsky
※写真はイメージです

こうした中、祖業であるイトーヨーカ堂をはじめとする国内でのスーパーストア事業についての戦略が注目されます。スーパーストア事業では、主にイトーヨーカ堂とヨークベニマルが中核となりますが、イトーヨーカ堂は、前期の営業収益が7293億円で、営業利益はわずか4億円と苦戦しています。ヨークベニマルは4699億円の営業収益に対して180億円でした。つまり、セブン&アイでは、イトーヨーカ堂の収益力をいかに上げるかが大きな課題なのです。

セブン&アイは、もともとイトーヨーカ堂というスーパーが祖業です。そこにコンビニが加わり、百貨店を加え、コンビニから百貨店までの流通をそろえた巨大流通グループに成長しましたが、百貨店からの撤退とともに、創業者の伊藤雅俊さんが今年亡くなられたこととも関連して、スーパー事業を今後どのようにしていくかに注目です(もちろんデニーズの今後にも注目です)。

【関連記事】
新宿伊勢丹は「過去最高売上」を達成したのに…地方百貨店の閉店ラッシュが今後も続くと断言できるワケ
年収700万円以上から「コンビニの値札」を気にしなくなる…統計が明らかにする「年収別の生活レベル」とは
これから「卵1パック300円」は日常になる…「安い卵」のために日本の養鶏業界が陥っていたチキンレース
PayPay、楽天、ドコモ、au、イオン「5大経済圏」を徹底比較…結局一番得するのはどこか
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと