「朝起きるのがつらいので会社を辞めます」

前出の根本CLMは離職を防止するには入社後の「社会人の壁」を注意深く観察し、フォローする必要があると指摘する。入社後に最初にぶつかる社会人の壁は朝起きて出社するという「生活リズム」である。実際に「朝起きるのがつらいので会社を辞めます」という新人もいたという。

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また「挨拶の仕方や敬語などの言葉遣い、仕事の報・連・相といった社会人に求められる基本的なビジネスマナーを習得することに壁を感じ、そこで躓く人もいる。次に組織人の壁がある。組織に所属するので会社のルールや組織に貢献するマインドが大事になるが、最近の新入社員は自分の成長を重視したいという人と、世の中の誰かのために貢献したいという人に二極化する傾向がある。自分の成長を重視する人には組織人なんだから、というのが通じずに『私は組織とか会社に向いていません』と言う人が出てきて、辞めてしまうこともある」(根本氏)

OJTでどう対応したらいいか

では会社や上司はこれから始まるOJTにどう対応すればよいのか。前出の平野所長は「OJTの前に、まず話をしてくれる関係を築くこと。本人の考え方を聞いたり、個別にコミュニケーションをしっかり取る必要がある。そうしないとよかれと思っていることが真逆に捉えられることもある。彼らがちゃんと話をしてくれる状態にまで持っていかないと育成もスタートしない」と語る。

リクルートマネジメントソリューションズのサービス統括部HRDサービス推進部トレーニングプログラム開発グループの桑原正義主任研究員はOJTのポイントについてこう指摘する。

「なぜこの仕事をやることが大事なのかという意味を伝え、納得感をしっかりと本人に持たせる。OJT担当には目的を共有すること、もう1つは本人の個性を知ることをまずやってほしい。本人の持ち味を知らずして成長にはつなげられない。本人が大事にしていることを聞き出し、仕事に関して『あなたはこういうことを大事にしているよね、将来はこうありたいと言っているよね、今の仕事は大変だけど、この仕事を通じてスキルアップにつながるかもしれないよ』と、本人にとってなるほどと思えるようなつなぎ方をすれば、決してやりたいことだけではなく、組織としてやってほしいこともやってもらえるようになると思う」