会社を突然辞めても大丈夫なのだろうか。弁護士の向井蘭さんは「法律では14日前までに退職の意思を伝えればいいとされている。就業規則などで30日前などとされていても問題ない。ただし、入社7年目のプログラマーに480万円の損害賠償が認められた判例もあり、重要な仕事を抱えている場合は注意が必要だ」という――。
荷物を入れた段ボールを運ぶ退職した女性
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新入社員が突然会社に来なくなる「バックレ退職」は許されるのか

4月になると多くの新入社員が会社に入社します。ところが、中には会社に何も告げず、逃げるように辞める「バックレ退職」をしてしまう人がいます。退職に関する連絡をはじめ、引き継ぎも行わないため、残された上司や同僚は多大な迷惑を被ります。

このような「バックレ退職」に対し、会社が損害賠償請求を行うことはまずありません。しかし、あまりにもひどい「バックレ退職」の場合は会社が損害賠償請求を行うことがあります。

新入社員の「バックレ退職」がネット上などで大きな話題になるものの、会社側の損害賠償請求が認められたケースはありません。しかし、これがどこまで許され、どこから許されないのでしょうか。本稿では判例を踏まえ掘り下げていきたいと思います。

従業員に480万円の損害賠償を命じた事例

知財高裁平成29年9月13日判決をご紹介します。私の知る限り、突然退職した従業員に対する損害賠償請求としては最高金額になるかと思います。

あるプログラマーが、パチスロ等のソフトウェア開発を業務内容としていた企業に雇用され、パチスロ等に係るソフトウェア開発の業務に従事していました。

ところが、会社代表者が、仕事の内容やそのやり方について注意を与えると、プログラマーは、入社7年目の平成25(2013)年12月29日、このソフトウェア開発会社が管理するこのプログラマーの連絡先情報を削除した上で、業務に関する引き継ぎを何ら行うことなく失踪し、その後も会社に連絡を取らないまま、パチスロ等の開発を業務とするB社に就職し退職するまで、プログラマーとしてパチスロの開発業務に従事しました。

会社は、突然のプログラマーの失踪による失注や外注費などの損害賠償請求を求めて提訴しました。