退社トラブルを避けるために必要なこと
では最後に、突然の退職であっても、会社と揉めたり、訴訟を起こされるリスクを抑えるためにどうすればいいのでしょうか。社員として最低限必要なことを4つご紹介したいと思います。
(1)退職日は最低14日後に設定する
民法上、正社員については、14日間前に退職の意思を伝えれば会社は拒むことができません。退職届やメールで14日経過後の日付を退職日として通知すれば足ります。
就業規則に「退職届は退職日の30日以上前に提出すること」などの規定があることがありますが、民法の規定が優先するため、このような制限に縛られる必要はありません。
(2)最低限退職届や退職メールを送る
突然退職するとしても最低限退職届や退職メールを関係者に送るべきです。
残された会社関係者は色々心配して、方々に連絡を取ったり、最悪は自殺などの心配をすることがあります。
できれば会社所定の様式で退職届を送る、それが難しければメールやチャットで簡潔に「いついつに退職します」と通知するべきです。これだけで会社の負担は軽くなり感情的な対立を和らげることができます。
連絡を取れるようにすれば訴訟リスクは減らせる
(3)最低限メールやチャットによる連絡は取れるようにする
「バックレ退職」の問題点は全く本人との連絡を取ることができないことです。様々な手続きや業務が滞り、多くの関係者の負担が増えます。
一方、人によっては会社側の人間とは連絡を取りたくない事情もあると思います(パワハラなど)。
できれば、最低限メールやチャットで連絡を取ることができるようにするべきです。内容によっては無視せざるをえない場合もあると思いますが、PCのパスワードや顧客情報や仕掛品の情報などについては淡々と返信するべきです。これだけで法的な損害賠償請求を受けるリスクは相当減ることになります。
(4)有給休暇はすべて使用してよい
使用者側で労働問題を扱う私が言うのも何ですが、退職時には有給休暇を全て使用しても構いません。有給休暇は一般の方が考えるよりもはるかに強力な権利であり、特段の事情がない限り、企業はこれを拒むことができません。有給休暇を全て使ったことを理由に会社が損害賠償請求をすることもできません。
なお、退職時の有給休暇の買い取りは従業員の権利ではないので、会社が買い取りに応じない場合は買い取りを法的に求めることができません。