出来高制だからできることがある

浅羽さんはそこでさらに、缶入りの商品を作ることを思い立つ。1つ500円のシベリアを缶に2つ入れて、1500円。社長は「それじゃ、誰も買わないでしょう」と呆れた。そこで「お客さんは缶も欲しいから、絶対に売れる」と粘り、最終的には「ウィローが缶を作り、村岡総本舗が必要な分を仕入れる」ことで合意に至る。

画像提供=浅羽雄一
缶入りのシベリアは大ヒット商品になった

2020年、缶入りのシベリア発売。最初に用意した3000個の缶は、1年もたたずになくなった。それから4年経った今でも、毎月1000個の缶が浅羽さんのもとから旅立っていく。

これも、先に挙げた「こどもびいる」と同じ出来高制。ちなみに、各地域のローカルサイダー、椛島氷菓とも同じような契約を結ぶ。浅羽さんは、「これほどいいやり方はない」という。

「僕らは、クライアントの意向を確認したうえで、いまなにが売れてるかとか人気だとか一切気にせず、自分たちが欲しいと思う商品を提案します。出来高制にしたら、共同経営みたいな感じになるから僕らも長く売れるようにしたいし、そのために口出しができるんですよね。例えば、そろそろデザインを変えた方がいいんじゃないのか、限定デザインを出したらいいんじゃないのかって提案がしやすい。それで売れれば結果的に僕らにも回ってくるから」

筆者撮影
出来高制だからできることがある。アイデアの提案だけで終わらせないのが浅羽さん流だ

出来高制にするのは、浅羽さんの心が動く案件で、なおかつ社長との信頼関係が前提。すべての案件をこの方式で請け負っているわけではないが、それでもリスクを負い、腹をくくってクライアントと同じ船に乗る浅羽さんのようなプランナーは、極めて稀な存在だろう。