民間団体や個人の保護活動のおかげ

殺処分減少の背景にはいくつかのからくりがあります。

その1つはすでに知られている通り、民間の動物愛護団体や個人の保護活動により、自治体の施設に収容された犬や猫が引き取られているという実態です。「殺処分になる前に何とか救いたい」という思いから犬や猫を引き出し、譲渡ができる状態までケアして、新しい飼い主に繋げているのです。

環境省の統計資料「全国の犬・猫の殺処分数の推移」を見る限り、殺処分は確実に減少しています。しかしながら、SNSなどで「このままでは殺処分に! 助けてください!」と呼びかけている投稿をよく見かけるのは、前述した実態があるからです。

最近は、「殺処分ゼロを達成しました‼」という自治体の発表をよく見かけますが、それは自治体の取り組みだけで成し得たものではなく、民間の動物愛護団体などの多大な尽力があってこその成果なのです。

しかしながら、「殺処分ゼロ」という数字ばかりを追い求めるあまり、自治体が動物愛護団体に負担ばかりを強いているケースもあります。その負担が長期間続けば、その施設がキャパオーバーになり、飼育環境の悪化や資金不足、人手不足などが発生します。もちろん他の要因もありますが、結果として動物愛護団体が多頭飼育崩壊に陥る事態が少なからず生じてきています。

自治体の「殺処分ゼロ」は部分的

もう1つのからくりは、環境省の「動物愛護管理行政事務提要の『殺処分数』の分類」にあります。この資料では動物の死亡を以下の3つに分類しています。

① 譲渡することが適正ではない(治療の見込みがない病気や攻撃性がある等)
② 分類①以外の殺処分(譲渡先の確保や適切な飼育管理が困難)
③ 引き取り後の死亡

例えば、2024年4月に掲載された沖縄タイムスの記事によると、「沖縄の犬猫殺処分2023年度は過去最少の167匹」「譲渡適性の処分は犬が初めてゼロ」と書かれています。このことからわかるように、各自治体の言う「ゼロ」は、前述した②の殺処分がゼロだったということを指しているのです。

このように、「殺処分ゼロ」を達成したと言っている自治体にも、実際には殺処分されている犬や猫が数多くいるということです。