横浜市や熊本市、奈良市など「犬猫の殺処分ゼロ」を実現する自治体が増えつつある。ペットジャーナリストの阪根美果さんは「たしかに自治体の施設における殺処分は減っているが、その背景には引き取り活動の増加がある。2013年以降に台頭していた悪質な『引き取り屋』も姿を変えて活動している。根本的な解決のためには、保護しなければならない犬や猫を減らす活動が必要だ」という――。
動物保護施設のケージの中からこちらを見つめる子犬
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「殺処分ゼロ」のからくり

環境省の統計によると、犬や猫の殺処分は右肩下がりで減少を続けています。2022年度の殺処分数は計1万1906頭(犬2434頭、猫9472頭)で、2004年度の計39万4799頭(犬15万5870頭、猫23万8929頭)と比較すると約33分の1になっています。

近年、動物愛護の精神の広がりとともに、熊本市、横浜市、札幌市、奈良市など「殺処分ゼロ」を実現する自治体が増えています。そのため「不幸な犬や猫が確実に減っている」「行政も頑張っている」と受け取る人も多いのではないでしょうか。しかし、その裏にはいくつかの「からくり」があり、実際には問題解決には至らず、新たな問題も起きています。

炭酸ガスによる窒息死、注射による安楽死

殺処分とは、自治体の保健所や動物愛護管理センターなどに持ち込まれた犬や猫などの動物を致死させることを言います。動物を引き取る状況には、正当な理由による一般家庭からの場合、また狂犬病予防法に基づく捕獲時の一時保護などがあります。

収容されている動物が譲渡されないまま増加すると、施設の収容能力を超えるため殺処分が行われます。狂犬病予防法では、保護された動物は最低2日間施設に収容し、公示し、その後1日以内に申し出がなければ殺処分ができるとしています。

しかし、収容日数については厳密に定められているわけではないので、各自治体の予算・人員・収容能力等により、1週間程度で殺処分をするところもあれば、殺処分はせずに収容し続けるところもあります。

殺処分の方法は、「ドリームボックス」と呼ばれる箱の中に炭酸ガスを入れ、窒息死させる方法が一般的です。しかし、環境省の「動物の殺処分方法の指針」に従い、できる限り動物に苦痛を与えない方法で行うことが求められています。そのため、近年では注射による安楽殺などに変更する自治体も増えています。