理解が進まないまま機能性表示食品制度へ

厚生労働省や食品安全委員会はこれまで、安全マージンという言葉こそ使わなかったものの、自然の怖さや食品の安全マージンの小ささ、健康食品と医薬品との併用の怖さなどを、健康食品関係者や消費者に幾度となく伝えてきました。

しかし、情報発信が足りなかったのか、理解が進んでいたとは言えません。2015年に機能性表示食品制度ができて以降、店頭にサプリメント製品がずらりと並び、むしろ「国が認めた制度」という信頼感も高まった中で、今回の紅麹サプリの健康被害が生じました。

厚生労働省は2020年、食品衛生法を改正し、健康食品のうち、「食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物であって、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定したもの」(指定成分等)を含む食品についてはGMPを義務付け、健康被害情報の把握を強化しています。海外の情報や国内での被害報告などをもとに決められもので、現在は4品目が指定されています。

現在、指定成分等となっている4品目
・コレウス・フォルスコリー
・ドオウレン
・プエラリア・ミリフィカ
・ブラックコホシュ

しかし、食品はすべてを把握しきれない“複雑系”ですから、おそらく、まだ表面化していないリスクにつながる要素がいくらでもあるはずなのです。食経験のない植物などの抽出濃縮物を摂ることについては、より一層の警戒をして当然です。

こうした背景、食品の性質を踏まえて、機能性表示食品制度を今、考え直さなければなりません。

人類は、壮大な人体実験を続けている

畝山智香子・立命館大客員研究員(本人提供)

さまざまな書籍で、食品の安全マージンや健康食品のリスクを訴えてきた畝山さんは今、こう話します。「食品は未知の化学物質の塊であり私たちはその一部についてしか知りません。人類は、現代の日本のような長寿をこれまで経験してきていないので、これまでの食経験が高齢者にはあてはまらない可能性すらあります」

えっ? どういうこと? つまり、若い人たちはまったく平気、安全な普通の食品が、体力、代謝力が弱まった高齢者には安全でない可能性だってある、ということ?

畝山さんの締めの言葉が印象的でした。「現在も人類は、食品について壮大な人体実験を続けているのです。敢えて、健康食品のような、さらにリスクの高い実験に参加する必要はないのでは?」

さて、あなたはどう考えますか?

※記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます。

<参考文献>
農林水産省・食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報
欧州食品安全機関(EFSA)・Glycoalkaloids in potatoes: public health risks assessed
内閣府食品安全委員会・無機ヒ素の健康影響は?
食品安全委員会・汚染物質評価書カドミウム
食品安全委員会・「健康食品」に関する情報
厚生労働科学研究・いわゆる健康食品による健康被害情報の因果関係解析法と報告手法に関する調査研究
厚生労働省・いわゆる「健康食品」のページ

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