どうやってサプリに「異物」が混入したのか
小林製薬の紅麹サプリメント問題は入院患者が3ケタを超え、死者も5人と報告されています。台湾でも、被害報告が出てきました。サプリと症状の因果関係は確定していませんが、原因物質としてサプリから検出された「プベルル酸」の疑いが浮上しています。
前回、〈なぜ「紅麹サプリ」で死亡例が起きたのか…健康に良いとされる「機能性表示食品」の制度的な欠陥〉と題して、制度の問題点を探りました。
今回は、「プベルル酸の性質」「どのような経路でサプリメントに混入したと考えられるのか」「こうしたカビが作る物質のなにが怖いのか」「ほかの食品にもこうしたカビ毒(マイコトキシン)が含まれるのか」など数々の疑問を、日本のカビ毒研究の第一人者である小西良子・東京農業大学応用生物科学部教授にぶつけました。
「プベルル酸」が原因とは限らない
小林製薬は、3月22日の段階でサプリメントから「意図しない物質」が検出されたと発表し、厚生労働省が26日、プベルル酸であることを明らかにしました。
小西教授によれば、この物質が今までに「食品を汚染するカビ毒」として報告されたことはないとのこと。そのため、「私はこの物質の詳しいことはわかりませんが」と前置きして、既存の文献から情報を提供してくれました。
まず、プベルル酸(Puberulic acid)は1932年、青カビのペニシリウム属が産生する化学物質として初めて報告されています。
その後、抗マラリア活性が見出され、ヒト培養細胞への毒性、マウスに皮下注射した場合の毒性は報告されています。ではこれが、多くの人にみられる健康影響の原因なのか? 小西教授は「現段階では、そういう結論は出せない」と言います。
「研究報告が非常に少なく、ヒトに対する毒性は論文としては報告されていません。マラリア原虫やヒト培養細胞に対して毒性が強いからといって、ヒトが経口摂取した場合の毒性が高く、腎毒性もあるとは言い切れませんし、もし毒性があったとしてもどの程度の量で毒性を発現するのかもわかっていません。まず、実験動物にこのプベルル酸を与える試験などを行なって調べる必要があります。それには少なくとも2〜3カ月程度の時間はかかります」