カビ毒の被害は世界中で発生している
小西教授は、歴史上さまざまなカビ毒がどのようにして見つかったのか、どんな種類のカビ毒が深刻な健康影響を及ぼすのか、詳しく知っています。それだけに、「現段階では決めつけてはいけないし、侮ってもいけない」と強調します。
たとえば、強い発がん性を持つカビ毒アフラトキシン類。1960年代にイギリスで七面鳥が大量死したことをきっかけに研究が始まり、アスペルギルス属のカビが産生するカビ毒であることがわかりました。その後、ヒトの疫学調査や動物実験で発がん性も明らかになっており、現在ではコーデックス規格という国際基準が設けられています。
日本では、食品衛生法に基づき、すべての食品について総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1及びG2の総和)が10µg/kgを超えてはいけない、とされています。農林水産省は「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」を策定しています。
ナッツやドライフルーツも汚染の可能性
日本では1960年代、輸入されカビの生えた「黄変米」が大問題になり、カビ毒研究が進みました。2006年にブラジルで発生した衝心脚気のアウトブレイクで、当該地域のコメから黄変米毒の一つであるシトレオビリジンを産生するペニシリウム属のカビが検出されて、原因物質と疑われています。
小西教授は「世界中で、カビ毒の被害が発生しています。食品や飼料においては、過去にヒトや産業動物で食中毒事例、つまり犠牲者が出たものは規制が講じられますが、毒性が高いというだけでは基準値設定などには至らないケースも多くあります」と説明します。
世界保健機関(WHO)も、Mycotoxinsというページを作って「カビは、穀物やナッツ、スパイス、ドライフルーツなどさまざまな食品で増殖し、急性中毒のほか、免疫不全やがんなど長期的な影響もある」と説明しています。