「カビ毒」は加熱しても毒性を失わない
②の原料から混入するケースを考えてみると、今回の場合、原材料が米と紅麹の種菌です。
小西教授は「最大のポイントは、カビ毒が加熱しても分解されず毒性を失わない、ということです」と話します。そのためカビが入り込み増殖してカビ毒が増えていると、カビ自体は殺菌により死滅してもカビ毒はそのままで、健康影響につながる可能性があるのです。
米は加熱殺菌してから使われたとみられますが、米自体が保管の段階で、カビにより汚染、つまりコンタミネーションされてプベルル酸が含まれていれば、製品のサプリメントにも含まれます。
紅麹菌が変化してプベルル酸を作った可能性はないのか? 小西教授は「その可能性は低いかと思います」と話します。問題のあったロットのみ、菌の産性能が変わって違う物質ができる、というのは、原料の米の成分に大きな変化があった時ぐらいしか考えられないからです。
小西教授は「製造していた工場の衛生管理がどういうものだったのかがとても気になっていました。報道で、すでに工場が移転し旧工場が閉鎖されていたと知り、原因解明が難しくなったのでは、と心配しています」と話します。
別の化学物質が混入したおそれもある
また、小西教授は「プベルル酸が原因でない場合についても探る必要がある」と指摘します。プベルル酸は、小林製薬が分析し「意図しない物質」として見つけたもの。しかし網羅的に分析したわけではない、というのです。
小西教授は「原因を1つに決めてしまうのも早計。その物質とほかの化学物質とのシナジー(相乗)効果や相加作用などの可能性もあります。プベルル酸の確認が、生産工程でのコンタミネーションを意味するのであれば、ほかのカビやカビが作った化学物質、または全く異なる化学物質が混入したおそれもある、ということです。今、厚生労働省の職員や国立医薬品食品衛生研究所の研究者などが、さまざまな可能性を検討しながら、精度の高い方法で解明を急いでいるところだと思います。それを待ちましょう」と繰り返します。