男性に「男らしさ」は必要なのか。「弱者男性」にインタビューしたライターのトイアンナさんは「『男性はこうあるべき』という古い価値観が男性自身を苦しめている。しかし、現状では男性が男らしさから降りるメリットはない」という。著書『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)より、一部を紹介する――。(第2回/全2回)
男が座って見ている夕日
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男の「勝ち組」と「負け組」の基準

臨床心理学研究者の森裕子氏とお茶の水女子大学人間科学系准教授の石丸径一郎氏の論文によると、女性は自分の優位性を示すとき、3つの軸があるという。

伝統的な女性らしさを持つ女性
vs
自立した地位ある女性
vs
性的魅力を持つ女性

このうち、どれかに秀でていたとしても「でもあなたは○○がないから」と他の軸で自らの優位性を示すことができる。そのため、女性同士の優位性には勝ち負けが表れにくく、競争や格付け争いが複雑化しやすいというものだ。

それに対して、男性の価値基準は概ねシンプルである。

・年収
・外見

総じてこのいずれかである。たとえば、男性が男性に年収を自慢されたとき、「でもお前は育児に参加していないから」と反論しても優位性は誇示できない。また、「お前、100kgのバーベルも持てないくせに」と肉体的男性らしさをアピールしても、ギャグに映るのではないだろうか。

親の年収と子の年収には相関関係がある

このように、男性社会における勝ち負けは実にシンプルである。また、年を追うごとに年収の価値も上がっていくため、中年男性においてはもはや「年収」の一極でもよくなってくる。ところが、このわかりやすすぎる勝敗は「弱者性」と相容れない。負けた側は、勝った側と公平なスタートラインに立ち、能力不足で負けたとみなされやすいからだ。

だが、実際にはそうではない。たとえば、お茶の水女子大学が発表した「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」によると、親の年収は子の学歴に比例するという。

また、厚生労働省がまとめた「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、学歴別の賃金の平均は、高校が27万3800円、専門学校が29万4200円、高専・短大が29万2500円、大学が36万2800円、大学院が46万4200円である。

つまりは学歴の高さと年収にも相関関係があるということだ。結果として、親の年収は子の年収に相関関係があると推測される。