「上位のオス以外に存在価値なんてない」

だが、仮にこういった「男らしさ」の有害な側面を認めたところで、現状の日本男性にとって男らしさから降りるメリットはない。実際に降りてしまった後、どうしたらいいのか。結局は生きていく道がなく、逃げ場はない。同性である男性同士でその悩みを分かち合うことも難しい。

その点について、実際にいっとき、男らしいとされる行動から距離を置いた松尾昭一さん(仮名)から話を聞いた。

不安な手
写真=iStock.com/kazuma seki
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――男らしさから「降りる」ということについて、どう思いますか。

昔は惹かれる面もありましたけど、何もいいことはなかったです。まずモテない。たとえば「男だからって、初デートで奢らなくていい」みたいなことを言う女って、クソだと思うんですよ。だって初デートで割り勘して、次につながるわけないじゃないですか。そういう提言をしている女だって、奢られるほうがいいんでしょ。というか、そういう男と結婚してるでしょっていう。

そもそも、上位のオス以外に存在価値なんてないんですよ。動物ってそうでしょ。メスに選ばれたオスにしか、子孫は残せないんですよ。メスは強いオスとしかつがいになりたくない。これはもう真実です。

マッチングアプリを開いたら、女はそこから上位の男だけを選んでいいねするでしょ。それでアルファ(上位の男)に遊ばれたとしても、俺みたいな下位の男と寝るより、ずっとマシなんですよ。むしろ俺だったら、金をもらってでもやりたくないって言われるだけですよ。

「総結婚時代」が終わり、動物の世界へ

みんなが結婚できる時代って、終わったわけじゃないですか。恋愛結婚って、動物の世界に逆戻りしたのと同じです。つまり、アルファオスが女を独占して、下位のオスは黙って死ぬしかないんです。

女はそれで、「男はみんな浮気してる」とか言うじゃないですか。俺らのことが見えてないんです。俺らは透明な存在なんですよ。アルファ以外の男は、視界に入らないんです。だから選ばれない。

俺らみたいな下位オスができることって2つしかなくて。ひとつは諦めて死ぬ。もうひとつは自分がアルファになることです。ナンパ師みたいな人たちって、必死で整形して、服全部買い替えて、話術も鍛えてて、すごいですよ。(ナンパ師を)バカにする人もいるけど、結局セックスできてるのはどっちだ、って話なんです。