ブロッコリーでボケは予防できるのか

ブロッコリーは、アブラナ科アブラナ属の緑黄色野菜です。キャベツの一品種がイタリアで品種改良されて今ある姿になったとされているそうです。

ブロッコリーには、β-カロテン、ルテイン、グルタチオンなどの抗酸化作用のある成分が多く含まれています。抗酸化作用を含む成分ということで、例によって認知症予防になると説明されることがあります。

実際のところ、ブロッコリーを食べることでボケ防止、ひいては認知症の予防になるのでしょうか。

こちらも例によって何度も繰り返しますが、抗酸化作用だけで認知症が予防できるほど、認知症の病態は単純ではありません。

ブロッコリーは身体にいいのは間違いありませんが、認知症を予防できるかどうかは疑問です。

ブロッコリーにはアセチルコリンが豊富に含まれていて認知機能の改善効果があると説明されることもあります。はっきり言わせてもらいますが、この説明はまったくのデタラメです。ブロッコリーにアセチルコリンは含まれていません。

また、アセチルコリンそのものを摂取しても、アセチルコリンは脳血液関門を通ることはできず、脳には運ばれません。したがって、ブロッコリーを食べて認知機能が改善されるはずがありません。

同様の働きをする成分=同様の予防効果と考えるのは早計である

最近わかってきたことですが、ブロッコリー、じゃがいも、オレンジ、りんご、ラディッシュの5種類の野菜・果物にはアセチルコリンを分解するのを防ぐアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(医薬品として使用されている塩酸ドネペジル、ガランターゼ)と同様の働きをする成分が含まれていて、その成分はブロッコリーに最も多く含まれているそうです。

保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)

古くより、塩酸ドネペジル、ガランターゼ以外にもアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は開発されていましたが、脳血液関門を通って脳に運ばれるかどうかが問題でした。

たとえ、ブロッコリーにアセチルコリンエステラーゼ阻害成分が含まれていたとしても、その成分が脳血液関門を通るかどうかは確認されていません。

また、塩酸ドネペジル、ガランターゼで認知症の進行を遅らせることができるとしても、認知症予防に有効であることは実証されていません。

このあたりの問題をクリアしない限り、ブロッコリーを食べると認知症が予防できると考えるのは早計です。

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