「統計教育」の改革が始まった

2012年の高校一年生から、すべての高校生が受けないといけない科目である必履修科目の数学I(注:この頃の高校数学の科目には「数学I」「数学A」「数学II」「数学B」「数学III」があり、主に理系はこの5科目すべて、主に文系は「数学III」を除く4科目が大学入試での試験範囲となっていた)に「データの分析」が入り、高校数学で「統計」をしっかり学ぼうという動きになった。

このとき「データの分析」の分野は、大学入試センター試験でも必答科目の出題範囲となったこともあり、高校で統計を教える必要性が高まった。

そして、2022年4月に高校一年生となった生徒の学年から始まった教育課程では、統計を教える必要性はさらに高まっていったのであるが、この教育課程下での大学入試が、いよいよ2025年1月から本格的に始まる。

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新しい教育課程の「最も大きい変化」

今までも教育課程が変わると数学はとりわけ分野の移動などといった変化が大きかったが、今回の教育課程における最も大きい変化は数学Bの「統計的な推測」の取り扱いである。

これまでも教科書にはこの「統計的な推測」に相当する分野の記載はあったが、大学入試という観点からすると必須の出題範囲ではないことが大半で、大学入試センター試験(以下、センター試験)、そして大学入学共通テスト(以下、共通テスト)でも選択を避けることが可能であり、そして、実際にも多くの受験生はこの分野を選択することがなかった。

したがって、この分野は高校の授業などでも基本的には扱われてこなかった。

しかし、今回の教育課程では国公立大学の2次試験などにおいて、この分野が出題範囲となる大学が出てきたこともあり、共通テストにおいても数学2の「数学IIBC」における選択問題において、この「統計的な推測」を選択する受験生が多くなる方向にある。

統計学と「数学の他の分野」の違い

2012年の高校一年生から「データの分析」が数学Iに入ることから、2011年8月22日の青山学院大学での講演会をはじめとして、文部科学省の視学官、大学教授などに登壇してもらう「データの分析」をどのように教えるかなどをテーマとした講演会を私の方で主宰し開催した。

統計学は、分散、標準偏差、相関係数といった値の「定義」だけでなく、「それらの値が何を表すのか」の理解をしていく必要があり、それによって、データをどのように「読んでいく」のかを考えていく必要がある。この点が、数学の他の分野と比べると異質であり、それまでの数学の授業のスタイルを変えないと統計は教えづらいところがある。これらの講演会ではその点を考えさせられることが多くあった。