「統計リテラシー」の欠片もない分析

ちなみに前出の「ハロウィン」のプレゼンでは他にも「統計リテラシー」が低いと思われる点が見受けられた。

まず、ハロウィンの経済効果の推移を表した棒グラフが出されたが、抜けている2011年のデータに対し、2010年と2012年を詰めて描いたグラフであったため、急激に経済効果が上がったように見えてしまうグラフになってしまっていた。本来ならば、抜けている2011年についてはその分の隙間を空けるべきなのであるが、このような基本的な統計リテラシーがないグラフを平然と出してきたところも問題がある。

さらに、「ハロウィンに対して何か行動を起こしたか?」のアンケート結果を出してきたが、完全に、そのアンケートを実施した組織のサイトに書かれていた記事を丸写ししたようなものであった。このときに出されたアンケート結果は、「ハロウィンにちなんで何か行動を起こしたか?」が「3人に1人」、「1人あたりのハロウィンにかけた金額」の平均が「6240円」であった。

これに対し、このアンケートを実施した組織のサイトを見てみると、この出された結果が「日本におけるハロウィンの実態」を表しているとは必ずしもいえないことが分かってきた。まず、アンケート対象者が「予めネット上で登録していた15~49歳の男女1000人」ということで、少なくとも「日本に住んでいる人」を母集団とした無作為抽出の標本集団ではないという点がある。

ジャック・オ・ランタン
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「日本は世界的に後れを取っている」の真意

次に、「3人に1人」については、このアンケートの具体的な数値を見たところ、「何か行動をした」の回答は28.1%であり、「25%」と「33.3%」のどちらかといえば「25%」に近い値であった。つまり、どちらかというと「4人に1人」になると考えられる点で、多めに見積もっている問題がある。

さらに、ハロウィンにかけた金額の平均の6240円であるが、この分母が「何か行動を起こした人数」になっており、アンケートの回答者全員を分母とすると1753円となりかなり低くなる。「分母」を示しているならまだしも、先のプレゼンにおいてはこの分母には注釈的なものとしても明記がなかった点も問題である。

このアンケートを実施した組織そのものがこのようなまとめをするのは(多少問題があると思いながらも)まだ良いのかもしれないが、この結果を開示されている元データも見ずに、自らのプレゼンにそのまま引用するというのは、統計リテラシーの欠片も見えない。

「日本は統計に関して世界的に後れを取っている」というのは、なにも「知識」の面だけではない。リテラシーですらそうなのである。これを打破するため、統計教育の充実が図られているのであるが、それはまたそれで問題点も多い。