上記の事例から導き出される「あまりにもひどいバックレ」とは何でしょうか。例えば、自分しか担当しておらず、かつ自分にしかできない業務を納期近くになり、全く引き継ぎもなく失踪するようにして退職した結果、失注したり、顧客から会社が損害賠償請求を受けたなど、具体的な損害が発生したケースです。

運送会社の判例(福岡地裁平成30年9月14日判決)では、運転手が当日突然失踪するように退職したため、一日分の運送ルートの売り上げが無くなり、その部分の粗利(6万22円)について損害賠償請求が認められました。

企業側から「突然退職した従業員のせいで業務に支障が生じた」などと相談を受けることがあります。多くの場合、損害を証明することが困難であるなどを理由に諦めざるを得ないのですが、逆に具体的な損害を証明することができれば、理論上は損害賠償請求が不可能なわけではないのです。

退職代行を使うことは有効か

私は使用者側で労働問題を専門的に扱っているのですが、ここ最近は「退職代行」を使って退職する従業員が増えているようです。

退職代行とは、労働者が会社を退職したいと考えた場合に、労働者に代わって退職の意思の通知等や使用者との連絡処理を行ってくれるサービスです。2018年頃からサービスを行う業者が急増し、テレビや新聞などのメディアに取り上げられる機会が増え、広く認知されるようになってきています。退職代行サービスに依頼することで、労働者の代わりに退職の意思を会社に伝えるため、「退職したいのに退職できない」という方の後押しをするサービスと言えます。

退職代行を使ったとしても会社からすれば突然の退職で損害賠償請求を行う可能性はありますが、退職代行を使うことでその可能性を減らすことができます。なぜならば、多くの退職代行業者は、簡単な引き継ぎ情報を本人の代わりに伝えやりとりをすることが多く、必要なパスワードや顧客情報などの最低限の引き継ぎを行うからです。

退職代行業者の対応にもよりますが、少なくとも「バックレ退職」よりは退職代行業者による退職のほうが損害賠償請求を受ける可能性は低くなります。

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