嫌な上司と顔を合わせず、面倒な手続きを自分でしなくていい――といった“利点”があることから、利用者が増えているという「退職代行」。新社会人がスピード退職する際などには非常に使い勝手がいいサービスのようで、今年の“トレンド”にもなっている。ただし、ストレスフリーと引き換えに、大事なものを失う可能性もある。ある若い会社員がはまった、思わぬ“落とし穴”を取材した。
ブロック感覚で退職代行を使ったが…
「安易に退職代行サービスを使わなければよかった」
そう話すのは、都内在住で、今年社会人3年目を迎えた和田昇さん(25歳・仮名)。
今年3月、新卒で入社してから約2年間勤めた大手グループの不動産営業の子会社を退職した。辞めるときは、退職にかかる手続きを自分で行わず、業者がやってくれる退職代行サービスを利用した。
和田さんは退職代行サービスを使った理由について、
「上司とそりが合わなかったのと、手続きが面倒だった。2年間、その上司のもとで働いていたし、今は『転職があたりまえ』とよく聞いていたので、もう辞めていいかなと。別に躊躇はありませんでした」と話した。実際、退職代行サービスを使うと、「辞めます」というメールと退職届を送るだけで済んだという。和田さんが利用した退職代行サービスの料金は2万4千円だった。
「本当にストレスフリーで楽でした。面倒な手続きを経ることなく辞められました」
退職代行サービスを利用する人は増え続けている。人材大手マイナビが今年7月に実施した「退職代行サービスに関する調査レポート(企業・個人)」によると、直近1年間(2023年6月以降)での退職代行サービスの利用状況をきくと、転職者の16.6%が「利用した」と回答。また、退職代行サービスを社員に利用されたと答える会社は、2023年の19.9%に対し、2024年はで23.2%に上っている(上半期時点)。