古賀氏は就任の記者会見で、有価証券の目論見書や保険の約款を例に、「公開情報が多くなればなるほど、真実、事実が埋没してしまう。全部公開することが本当に正しいのか、わたし自身の中で納得できるのにはもう少し時間がかかる」と議事録の全面開示に否定的な見解を示したが、議事録を目論見書や約款と同一視するとは、見当違いも甚だしい。

④と⑤についても、経営委は執行部に責任を押しつけるのではなく、執行部と連携して対処すべき由々しき問題だろう。

前代未聞の不祥事は“未解決”のまま

経営委が、問題発覚後の2021年に森下委員長を互選で再任したことは、経営委のガバナンスが機能不全に陥っていたことを雄弁に物語っている。日本郵政グループからの圧力に経営委が同調したことだけをとっても、公共メディアの独立性を疑うには十分であり、その時点で森下氏の進退も問われるべきだった。

違法な番組介入をし、それを隠し続けようとした経営委の振る舞いには不信感が募るばかり。放送法をきちんと修得せず、ジャーナリズムの使命を理解できない経営委員ばかりでは、公共メディアを標榜するNHKにとって致命傷になりかねない。

経営委が番組に介入するような事態を繰り返してはならない。稲葉延雄会長は、個別の番組について「執行部側の自主自律を担保していただくことが大切だ」と、古賀新体制の経営委にさっそくクギを刺した。

かんぽ生命保険の不正販売問題は、後に、NHKが番組で指摘した通りだったことが明らかになり、日本郵政グループは、NHKに抗議した3社長と鈴木上級副社長が引責辞任、3カ月の業務停止に追い込まれる前代未聞の不祥事に発展した。

上田会長が、「厳重注意」を受けて謝罪する必要はまったくなかったのである。

「受信料を払う視聴者」の不信感は増すばかり

古賀氏は、一連の問題について「事実関係を知らないので言及するつもりはない」と語ったが、経営委員長としては、それでは済まされない。最初の仕事は、一刻も早く事実関係を掌握し、正式な議事録を開示して、森下氏から引き継いだ負の遺産を清算することではないだろうか。

未開の荒野に踏み出すネット必須の「ニューNHK」が、視聴者の目線に立って、公共メディアとして公正中立をどう担保するか。

古賀新委員長が本気で取り組もうとするなら、口先だけの片手間仕事ではなく、常勤の経営委員長となって真摯に向き合う覚悟が求められる。

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