「1000円の壁は存在する」とは一概に言えない
ここまで、1000円が壁になるかならないかはターゲットとする顧客の支払い意欲次第であるという事をお伝えしてきました。
収益の最大化を目指して顧客数と価格だけを勘案したシミュレーションは机上の空論でしかなく、現実的ではありません。つまり1000円が壁になると、単純にいうことはできないのです。
冒頭のシミュレーション結果では、満席状態を維持できれば1杯1100円に値上げしても売り上げを確保できることがわかりました。にもかかわらず、ラーメン店の中には「1000円の壁があるから1000円以内で」と一般論をあてはめて価格を据え置きした結果、閉店に追い込まれるケースが少なくありません。これはとてももったいないことです。
設計を正しく実装するためには、受け入れ可能なキャパシティに加えて顧客の支払い意欲を考慮し、極端にキャパを超えず集客が成り立つ絶妙なラインで価格を調整する視点が必要だといえるでしょう。
ラーメン店と一口にいってもそのジャンルや形態、エリアはさまざまです。そしてそれだけに、バラエティに富んだ顧客ペルソナが考えられます。
鉄則は「誰が、どんな商品に、いくら払いたいか」
「1000円の壁」に惑わされず、自分の店でラーメンを消費する層はどういう人たちなのか、そのターゲットにとってはいくらまでが予算内なのか。顧客のペルソナと彼らの支払い意欲を調査で明らかにして初めて、妥当な価格を定義できるのです。
ラーメンに限らず値決めの鉄則は、誰がどんな商品/サービスにいくら支払う意志を持っているのかを特定し、そのラインから大きく逸れない範囲で価格を設定することに尽きます。それに加えて今回のような受け入れ可能な数に制限のあるビジネスの場合、そもそも何人にサービスを提供できるのかという観点も不可欠です。
1000円の壁という固定観念にとらわれず、ケースに応じた価格を顧客層、支払い意欲視点から導くことが、顧客の納得を誘う最善の方法といえるでしょう。