立地別の値上げを実施したマクドナルド

利用頻度に限らず、属性情報によっても適正価格は変化します。その一例がチャネルです。ラーメン店でいえば、イートインなのかフードデリバリーなのかで支払い意欲は大きく変わります。

過去の自社の調査によれば、フードデリバリーサービスの利用時には、1000円を壁に感じる人はイートイン時と比べて6.6ポイント少なく、1200円だと18.5ポイント、1500円だと25.1ポイントも離脱率が低いのです。フードデリバリー利用時のほうが、イートインの利用時よりも価格に寛容になるといえそうです。

店舗の立地、つまり利用客の居住エリアも支払い意欲に影響を及ぼします。

この点を巧妙に突いた値上げを実施したのがマクドナルドです。マクドナルドは店舗をその立地によって「通常店」「準都心店」「都心店」と区別。そのうえで各店舗の利用客の支払い意欲に差があることを特定し、「都心・準都心店」の販売価格のみ引き上げるエリア別値上げを実施しました(2023年7月)。

渋谷のマクドナルド
写真=iStock.com/winhorse
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ラーメン店においても店舗の立地によって支払い意欲に差がある可能性は十分にあり得るでしょう。

それ以外にも、利用用途が「ご褒美ラーメン」や「デート」など特別感を重視する場面なのか、「サクッとランチ」など手軽さを重視する場面なのかも支払い意欲に大きく影響します。

顧客のニーズを見極めた「1杯2700円のラーメン」

実際に「たまの贅沢に食べる嗜好品」としての地位を確立し、1000円の壁を大きく超える高単価でも顧客に受け入れられているラーメン店も存在します。

「らぁ麺 飯田商店」では、通常のしょうゆらぁ麺を1800円、わんたん入りしょうゆチャーシュー麺を2700円で提供していますが、こだわり抜いた素材や旨みを究めた製法、そしてその味は大きな話題を呼び、予約がとりにくい状況が続いています。

らぁ麺 飯田商店の例からも、顧客ニーズに応え価格に見合う価値を設計することができれば、必ずしも1000円の壁はハードルにはならないことは明白です。

「誰」をターゲットにするかによってそのニーズは大きく異なり、支払い意欲にも差が生まれます。そうした差が発生する顧客セグメントを突き止めて、ターゲットのニーズに合った商品を設計し支払い意欲に沿った値決めができれば、1000円を超えても顧客に受け入れられる可能性はグッと高まるでしょう。