海外展開に手応えを感じたが…

多種多様な商品展開で一世帯当たりの販売量を増やす取り組みと並行して、顧客数そのものを伸ばすための海外展開も検討する。特にエコに対する意識が高いヨーロッパではニーズがあると踏む。実際、コロナ禍前に本格的に動いたことがあった。

「フランスやイギリスなどに何度か視察へ行きました。向こうにはすぐに壊れそうな安い箒しかなく、しかも雑貨屋のような店にしか売っていませんでした。百貨店などもターゲットに、きちんと南部箒の良さを説明すれば十分いけると感じました。未開拓の市場だからチャンスはあるし、もしフランスで人気が出れば、逆輸入で日本でも話題になるはず」

実際にフランス視察の折、即席で南部箒をプレゼンテーションしたところ、その場で雑貨屋が1万5000円の商品を5本ほど注文してくれたそうだ。このことに高倉社長は自信をつけた。

ところが、タイミング悪く、箒作りに関わっていた父や叔母が体調を崩してしまったこと、コロナ禍で海外渡航ができなくなってしまったことなどが重なり、海外展開を断念した経緯がある。コロナ禍が落ち着いたことで再起を図っているが、今はまだ高倉社長が九戸村の現場を離れるわけにはいかない。なぜならスタッフを育てなければならないからだ。

撮影=プレジデントオンライン編集部
海外展開には手応えがあるが、思い通りに進められないことも多い

目下の課題は人材の確保と育成。現在は親族にあたる社員が1人と、地域おこし協力隊が2人。それと近所の人たちをパートタイムで雇っている。いろいろな人の手助けを借りなければならないのが実情だ。

「若い人たちが働きにくることもありますが、すぐに辞めてしまう。こんなはずじゃなかったと言って……」と高倉社長は嘆く。

確かに炎天下での農作業などは決して楽ではない。ただ、どんな仕事であれ、ハードな部分はつきものだろう。

「辞めてしまった人はもっと楽な仕事ができると思ったんでしょうね。もちろん、私に指示を出されているうちはつまらないでしょうけど、仕事をある程度任されるようになれば楽しくなるはず。5年間我慢できれば面白くなるよと伝えていましたが、ほとんどがそこまで持ちませんでした。こんなにきついとは思わなかったと。でも、きついと言っても、草取りなんて年間10日あるかないか。収穫作業も15日くらい。あとは箒作りと販売。販売は全国どこにでも行けるし、おいしいものも食べられるじゃないですか」

高倉社長は真剣な眼差しで訴えかける。若者が定着しない、後継者がいないといった、地方のものづくり現場が抱える問題がここにもあった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
人材確保が喫緊の課題だという