SFファン待望! 宇宙と地球でホログラム状態での会話成功
映画「スター・ウォーズ」で、青白い光で主人公の前に現れるレイア姫。それは、ホログラムと呼ばれる空間に浮かんだ3次元映像で、本人はそこにはいません。遠隔地に人の姿を3次元で投映することができるホログラムはさまざまなSFにも登場しますが、現実世界でも役に立つ時代が近づいていそうです。
実験に成功したのは、地上と国際宇宙ステーションの間。送られた映像は、宇宙飛行士の健康を管理する「フライト・サージャン」であるジョセフ・シュミット博士のものでした。
宇宙飛行士は、マイクロソフト社が開発した複合現実(MR)グラスであるホロレンズを装着し、地上から送られたシュミット博士(の3次元映像)とリアルタイムに会話することに成功したのです。NASAはこの技術を、「ホログラム」と「テレポーテーション」を組み合わせて「ホロポーテーション」と呼んでいます。
MRは、完全にCG世界に入る仮想現実(VR)とは違って、グラスをかけた人がいる実空間に別の場所にいる人の3次元映像を重ねて映し出すものです。
限られた人たちと閉鎖空間に長く一緒にいることを強いられる宇宙飛行士にとっては、MRで別の人と話すという体験はストレスの軽減にもつながるかもしれません。離れて暮らす家族(の3次元映像)と会話を楽しむのもいいでしょう。また、複雑な実験装置の使い方をわかりやすく説明したり、今回のように医学的なアドバイスをしたりと、さまざまな用途が検討されています。
国際宇宙ステーションは秒速7.7kmという高速で飛行していますので、そこに3次元映像という大容量データを送ることは簡単ではありません。実際、送られた3次元映像はスター・ウォーズで描かれたようななめらかなものではなく、ブロックノイズが目立ちます。ストレス軽減のためには、データ容量を増やすなどしてもう少し本物に近い映像がほしいところです。
現時点でまだ発展途上とはいえ、ホロポーテーションの応用先は宇宙に限りません。深海探査や極地探検はもちろん、単身赴任のお父さんがMRを使って家族と同じ時を過ごすことだってできるでしょう。「まるでそこにいるような体験」にするには技術の進展がもう一歩必要かもしれませんが、SFで見るような世界はもうそこまで来ているのです。