日本の大型プロジェクトでは建設費が想定よりも上回るケースが相次いでいる。なぜ「費用の正確な計算」ができないのか。建築資材販売や建設DX推進事業などを手掛ける野原グループの野原弘輔社長は「多数の企業が複雑に絡み合って一つの建造物を造るという構造に問題がある。現場はまだまだアナログが優位で、コミュニケーションがうまく取れていない」という――。
建設中の新国立競技場の風景
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万博の建設費はすでに2度も増額された

近年の建設産業は、人手不足に起因する工期の遅れや建設費の増額、痛ましい事故などが相次いでいる。

工期遅れの例でいえば、2029年の完成を目指して建て替え工事が進められている東京・世田谷区の区役所本庁舎で、大手建設会社が工程計画などを誤ったため、全体の完成予定が2年近く遅れる見通しになっている

建設費の増額では、開幕が1年半後に迫る大阪・関西万博の会場建設費が、すでに2度も増額されている。日本国際博覧会協会(万博協会)は、資材価格や労務単価の高騰が主な要因としているが、見積もりの甘さを指摘する声も少なくない。

2024年4月からは、働き方改革関連法の時間外労働時間の上限規制が建設産業にも適用される。これを受け、一部公共事業でも工期延長が発表されている。こうした問題は、区民の施設利用開始時期の先延ばし、国民の税金による負担増などの観点から、決して社会や個人(生活者)にとって無関係ではない。

このままだと「工期遅れ」が頻発する

全ての産業で進む人手不足だが、とりわけ建設産業は建設現場技能工の高齢化や若手不足が顕著だ週休2日制(4週8閉所)に向けた取り組みは、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)をはじめとする各業界団体からも発表され、各所で実証実験もなされているが、定着しているとは言えない状況だ。

これまで長い労働時間で人手不足をカバーすることで工期に間に合わせてきた建設産業に労働時間の上限規制が適用されることで、工期を守れなくなる状況はますます増え、国民への影響が拡大することは容易に想像できる。