ハンマー投げや大砲で打ち上げるクレイジーな発射システム

宇宙に行く方法といえば、ロケット。しかしそんな固定観念にとらわれないイノベーターは世界に何人かいるようです。ここでは、ロケットを使わないで宇宙に人工衛星を打ち上げようとする2つのアイディアをご紹介します。

ひとつは、ハンマー投げのように衛星をぐるぐる振り回し、遠心力を使って高速で空高く投げ飛ばすシステム。アメリカの「スピンローンチ」という企業が開発しています。高さ50mにもなる円形加速器をアメリカ・ニューメキシコ州に建設し、すでに何度も打ち上げテストをしているというから驚きです。

円形加速器の中にはハンマー投げ選手も真っ青の巨大な腕が設置されていて、打ち上げるペイロードを腕の先端に取り付けます。加速器の中は減圧されているので、空気抵抗は気にしなくても構いません。この腕をぐるぐる振り回すことでペイロードを秒速2kmまで加速、ちょうどいいタイミングでペイロードを分離して、空に放り投げるのです。

打ち上げテストでは長さ3mの物体を高度8kmまで到達させています。ただしこれはあくまでもテスト。宇宙に到達させるための本番の加速器はさらに3倍大きなものになり、2026年の初打ち上げを目指しているようです。

別の方法を考えているのは、同じくアメリカの「グリーンローンチ」。衛星を振り回すのではなく、大砲のように打ち出す形式を取ります。長い筒に水素と酸素などを充填し、このガスを爆発させることでペイロードを発射するのです。

この方式では最大で秒速11.2kmを記録したことがあるようですが、グリーンローンチでは秒速6kmほどにとどめ、衛星や発射装置へのダメージを軽減する予定だそうです。とはいえ、秒速6kmというのはマッハ17にも達する猛烈な速度です。

スピンローンチにしてもグリーンローンチにしても、これだけで地球周回軌道に物体を打ち上げることはできません。小さなロケットごと打ち上げ、ある程度の高度に達したらこのロケットを噴射して最終的な軌道に衛星を投入する計画です。

いずれも普通のロケットより安く打ち上げられるというのを利点にしています。一方、どちらもものすごいスピードで振り回されたり撃ち出されたりするので、衛星にかかるGはとても大きくなります。

グリーンローンチでは最大3万Gとのこと。1kgの物体に30tの重みがかかるのと同じですので、衛星の開発は難しいはず。もしかしたら、従来の衛星とはまるで違う物体を打ち上げることになるのかもしれません。