育児の中でも最難関種目
子育ての悩みは尽きない。とりわけ「子どもを寝かせる」は育児の中でも最難関のひとつではないだろうか。寝かせようとしても思うように寝ないのが当たり前で、特に子どもが赤ちゃんの頃、保護者は限界を超えた極限の睡眠不足を余儀なくされる。しかしそれでも「きちんと寝かせなければ子どもがちゃんと育たない」というプレッシャーを背負い込んで、一線を超えてしまいそうな自分を何度も押し留めて、それを毎日毎日繰り返しやるのである。僕の子どもはもう5歳になったけれど、思い出しただけで「病むな」というのはもはや無理、と思えてくるような体験だった。
今回お話をうかがったのは、小児科医の森戸やすみさん。森戸さんは専門的知識とご自身の育児経験から育児にまつわる「怪しげな言説」や「不必要な思い込み」を、客観的データを用いながら公平にバッサバッサと切っていかれるような人である。高著『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社 2020年)は、子ども第一でありながら保護者にしっかりと寄り添う姿勢が印象的だった。
睡眠に関する説が「出ては消える」を繰り返すワケ
――子どもを寝かせる時間について悩んでいる保護者は多いようです。特に近年は共働き世帯が増え、帰宅してからどれだけ急いでも寝る時間が遅くなってしまうという話をよく聞きます。保護者は、理想通りに子どもが寝かせられないことについて責任を感じがちです。また、その“理想”というのも「9時までに寝ないと」だったり、「22時からのゴールデンタイムを」だったり色々な情報があって、何が正しいのかわかりにくいという現状です。
【森戸】結局「どうしたら子どもを寝かせられるか」や「どうしたら親ももっとそこに楽に関われるか」というのは決定打がないので、色んな説や寝かし付け方が現れては消えを繰り返しています。
「子ども 寝ない」「赤ちゃん 寝ない」で検索すると、サジェストワード含めて膨大に出てくるし、「baby sleep」などの英語で検索してもたくさん出てくるので、世界中の人が困っているのだと思います。
――全世界共通の悩みなのですね。たしかに、私も検索した経験があります。
【森戸】あと、子どもが泣いちゃって寝ない場合、「子どもが泣き止まない」「思うように寝てくれない」というのも保護者にとってすごくストレスなんですよね。