「早く帰ってずるい」「頻繁に休んでずるい」という“子持ち様批判”はなぜ加熱するのか。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「現在の子育て世帯はたった18%と少数派だ。子どもを育てたことのない大人が激増していることは子持ち様批判を加熱させる一つの要因となっている」という――。
ストレスのたまったビジネスウーマン
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増加する子持ち様への批判

近年、「子持ち様」に対する批判がSNSで散見されるようになってきました。「子持ち様」とは、子どもを持つことを理由にマナー違反があったり、周囲との軋轢を生みだしてしまう親のことを指すネットスラングです。昨年、子どもの発熱で休んだ母親の仕事を負担することになった同僚の投稿がきっかけで、Xのトレンドにもなりました。「子持ち様が頻繁に休んでずるい」というのです。

増加する「子持ち様」批判について、どのように考えていけばいいのでしょうか。「子持ち様批判」については、詳細な統計もなく、その実態は詳細にわかっていない点も多いのですが、今回は3つの視点から「子持ち様」批判について考えていき、その背景にある社会変化について考えてみたいと思います。

「薄々思っていたこと」が共有・拡散されるようになった

「子持ち様批判」に関して、社会の変化を関連付けると、次の3つの変化が原因となり、顕在化した問題だと考えられます。

まず1つ目は、SNSの発達です。これまで子持ちの親に対する批判を持つ人々はいたでしょうが、その意見は各個人のものであり、多くの人で共有されるものではありませんでした。しかし、SNSの発達によってそれらの意見が共有され、社会にインパクトを持つまでに強化されたと考えられます。テクノロジーの変化によって、みんなが薄々思っていたことが簡単に共有・拡散されるよう社会が変化したわけです。