子どもを育てた経験のない大人が増えている

2つ目の変化は、子どものいる世帯の減少です。日本では、長きにわたる婚姻数と出生数の低下によって、子どものいる世帯数が減少しています。2022年の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、18歳未満の未婚の子どもがいる子育て世帯の割合が初めて20%を下回り、18.3%となりました。また、18歳未満の未婚の子どもがいる子育て世帯は、991万7000世帯で、初めて1000万を割り込んでいます。

これらの数字は、「子育て世帯が今では少数派」になりつつあることと、「子どもを育てた経験のない大人」が増えたことを意味します。

子どもを育てることは多くの苦労を伴いますが、社会の中で少なくない人がその苦労を経験しなくなっており、寛容になれなくなった可能性があるのではないでしょうか。数の上で子育て世帯と非子育て世帯の差が深まっており、子育ての苦労を「お互い様」と割り切れなくなってきていると考えられます。

これまでの日本は皆婚社会であり、多くの人が何らかの形で子育てに携わってきました。実際に50歳時点で1度も結婚したことがない未婚者の割合を見ると、1970年から1990年までは男女ともに6%未満でした。しかし、1990年代以降に徐々に未婚者の割合は増加し、2020年には男性で28.3%、女性で17.8%にまで至っています。

このように日本では、子育て経験をしない人が増えるといった社会変化を経験しており、これが「子持ち様批判」の背景にあると考えられます。

赤ちゃんを抱っこするお母さんとお父さん
写真=iStock.com/maroke
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企業内で未婚者に負担が偏る仕組みになっている

3つ目の変化は、子育て負担の外部化・社会化の影響です。これまで日本社会では、子育ては家庭で行うものであり、この結果として女性は出産後に専業主婦になっていました。しかし、社会環境の変化に伴い、出産後も女性が就業するようになると、これまで家庭で抱えてきた子育て負担を別なところで対応する必要が出てきました。

その1つが保育園や学童であり、子どもの祖父・祖母の支援です。企業の中では女性の子育て負担をさまざまな方法で対処すると考えられますが、どうしても安定的に労働時間が確保できる子どものいない働き手(未婚者等)に負担が偏ることが予想されます。企業が代替要員を確保できればいいのですが、それができるのは一部の体力のある企業のみでしょう。おそらく、多くの企業は既存の人員で何とか対処している状況にあり、負担が増加した社員に対しても何らかのリターンが用意されている環境ではないと予想されます。これでは不満が溜まる一方であり、「子持ち様批判」へとつながってしまうわけです。