相手と良好な関係を築くには、どうすればいいのか。一級建築士の高原美由紀さんは「間取りや家具配置といった環境は、人間関係に大きく影響する。例えば、会社や家庭のトラブルも、机などの配置次第で解決できる」という――。(第1回)

※本稿は、高原美由紀『できる人は25分で「場所」を変える』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

リビングのテーブルで家族団らん
写真=iStock.com/kohei_hara
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「環境」は思考や集中力に影響する

私はこれまで9回の自宅の引っ越し、4回のオフィスの引っ越しのたびに、内装や配置を工夫し、改装して実験しました。その過程で見えてきたのは、環境によって思考の質や睡眠の質、集中力が大きく違うということでした。

デザインを考えるときは、明るく視界が開けた開放的な空間や、景色のいい場所のほうが創造的なアイデアが生まれやすいと感じました。

一方、経理などの細かい作業は、余計なものが目に入らず、小さな空間のほうが集中しやすくなりました。会議も、立って行うと早く終わり、私が会議テーブルの中央に座らないほうが、スタッフの意見が活発になりました。

また、内省するときは、より小さな空間のほうが、自分の感覚や気持ちにアクセスしやすくなりました。寝室では、スタンドの灯りをつけたまま眠るよりも、暗くしたほうが熟睡できました。

本棚の本も、色や形をそろえて並べたほうが視界が落ち着きました。デスク上にカタログや書類を積み上げていると、アイデアは浮かびにくいのに、視界をすっきりさせたら創造性が高まりました。

なぜか「部下に厳しい」と言われる50代管理職

この傾向は、私だけでなくスタッフやクライアントにも共通していました。環境が思考や集中力に影響することは、環境心理学や認知科学でも報告されています。

では、この法則は実際の現場でも同じように働くのでしょうか。次に示すのは、職場と家庭で起きた2つの事例です。

【距離を変えただけで部下との衝突が減った(50代男性管理職)】

50代の男性管理職は、ずっと「部下に厳しい」と言われていました。本人は「普通に話しているつもり」でした。

原因は、デスクの位置にありました。スタッフの背後で、しかも3.6m以上離れた位置から声をかけていたのです。人は3.6mを超える距離から話しかけると、声が届きにくく、自然と言葉尻が強くなります。これを私は、言葉尻の法則と呼んでいます。

背後から強い語気で声をかけると、部下たちに“いつも怒られている”印象を与えてしまい、警戒心を生み、職場の空気を凍らせていました。そこで、デスクの位置を3.6m以内、スタッフの斜め前方に移動しました。すると、同じ言葉をかけていても、伝わり方が大きく変わりました。