ANAの客室乗務員として初めて、65歳定年まで勤め上げた大宅邦子さん。国際線路線の立ち上げにも携わり、主に国際線のファーストクラスで長く乗務してきた大宅さんは「おもてなしの真髄とは、行き違いを恐れず、『根っこ』のサービスに気を配ることだ」という――。

※本稿は、大宅邦子『新版 選んだ道が、一番いい道』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

飛行機で食事を提供する客室乗務員
写真=iStock.com/Aureliy
※写真はイメージです

「どうしてもお肉が足りない」

お食事のサービスはCAの永遠の課題です。腕の見せどころでもありますし、お断りをしなければならないこともあり、クレームが生じやすいのも事実です。

代表的なのが和食か洋食かといったご希望で、全員の意にそえず、一部のお客様にご協力いただかなくてはならない場面もあります。

人気があるメニューはどれか、どちらかに偏らないか、毎回データとして記録して調整していますが、「どうしてもお肉が足りない」ということもあります。

「多めに搭載すればいい」と思われるかもしれませんが、そのコストは航空運賃に上乗せされ、結局はお客様に跳ね返る。そう考えれば、気持ちよく納得したうえでご協力いただけるよう、コミュニケーションをとるのが一番だと私は考えていました。

いつかのファーストクラスでのこと。たまたま全員が和食のご希望で、1食足りなくなってしまったことがありました。私がお願いしたのは、一番若い男性のお客様でした。

「大変申し訳ございませんが、ご年配の方に譲っていただけないでしょうか?」

「年配の方」でなく「女性の方に」という場合もありますが、たいてい今の言葉ですんなりご理解いただけます。

洋食で我慢していただくぶん、「ご注文のステーキに、ご飯とお味噌汁をご一緒にお持ちしましょうか」と提案したところ、それはうれしいと喜んでいただけました。お話をうかがうと、出張でアフリカに3週間もいらしたとのことでした。

カート数の差がクレームを生んだ

いつも丸く収まるわけではなく、クレームをいただくこともあります。

20年も前のゴールデンウィークのことでした。満席のロンドン便で、やはり食事のサービスが遅いというクレームをいただきました。

エコノミーに2つある通路からお食事のサービスをしていたのですが、右側は2台のカート、左側は1台のカートだったために、どちら側から食事が届くかで、同じ横並びの列でも時間差が出てしまいました。左右両通路とも2台でサービスするにはCAの数が足りず、かといって、カートは2人で引く決まりでした。

クレームの主は真ん中の席に座っていたご夫婦。配膳の時間差が大きくて、一緒に食事ができなかったというのです。特にご主人がご立腹で、最終的にチーフパーサーの私がお話をうかがいました。

原因は左右の通路のカートの数の差ですが、それはこちらの都合であり口にすることはできません。また、「時間差が出ないように、カートの数を増やします」などと、できない約束をするのも不誠実です。