レジ袋の有料化によって、プラごみを減らすことはできたのか。東京大学特任研究員の保坂直紀さんは「レジ袋の使用量は減ったが、プラごみ廃棄量は横ばい状態だ。政府がその理由を検証し、改善することを怠っているため、国民は多くの政策にモヤモヤ感を抱いてしまう」という――。
ビニール袋
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「永遠のごみ」になるプラスチック

あれから4年を経て、すっかり社会に定着した感がある。ただし、すこしのモヤモヤを抱えながら。レジ袋の有料化とマイバッグの持参である。

それまでスーパーなどで無料でもらえたレジ袋が原則有料となったのが2020年の7月。プラスチック製品の安易な使いすぎを一人ひとりが自覚して、プラスチックごみを減らすための手段として国が導入した施策だ。

プラスチックは、20世紀半ばから広く使われるようになった丈夫で安くて便利な人工素材だ。だが、使い終わって捨てられ、それが自然環境中に出てしまうと、生ごみなどとは違い、消滅することのない「永遠のごみ」になる。プラスチックを分解して水と二酸化炭素に戻してくれる微生物が、ほとんどいないからだ。だから、使いすぎを減らし、ごみになった場合は、きちんと回収して環境中に漏れ出さないように処理する必要がある。

「脱レジ袋」は数字に表れている

レジ袋は、河原や海岸、深海底にまで散らかっている代表的なプラスチックごみだ。海などの自然環境に流れ出て、いつまでも残るプラスチックごみ。そして細かく砕けて生き物の体内に取り込まれるマイクロプラスチック。それが2010年代後半から世界的な社会問題となり、各国がプラごみの抑制に動いた。日本のレジ袋有料化も、その流れに沿ったものだ。

環境省の調査によると、1週間にレジ袋を使わなかった人の割合は、2020年3月には30.4%だったが、有料化後の2020年11月には71.9%に増えた。レジ袋の辞退率は、コンビニでもスーパーでも大幅に上がった。

日本ポリオレフィンフィルム工業組合によると、2021年のレジ袋の出荷量は3.4万トンで、2019年の4割に減った。「金を払うなら不要」という金銭的動機に後押しされたとはいえ、人々はレジ袋の使用を現実に減らしたのだ。

それなら、冒頭で述べた「すこしのモヤモヤ」は、いったいどこから来るのか。